「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」(座長:井村伸正北里大学名誉教授)は22日、離島や継続使用者への第2類薬の通信販売を2011年5月31日まで認める経過措置は行政の責任で行うこととし、検討会としての関与を否定して最後の会合を終えた。厚生労働省は月内に省令を公布し、6月1日の薬事法完全施行に間に合わせる。また、継続使用者の判断方法等を通知で規定する方向だ。
この日の会合は、開始前から三木谷浩史委員(楽天会長)が、報道カメラで意見交換を全て撮影するよう要求し、井村座長が委員に諮り、反対多数でカメラの退室を促すなど波乱含みで始まった。
冒頭、厚生労働省から、前回会合の議論を踏まえ、継続使用者に対する通信販売の措置について、購入者への情報提供要否の最終的な判断は、薬剤師または登録販売者が行うことを省令に明記する考えを説明した。
また、省令改正案に対するパブリックコメント結果を報告。それよると、合計9824件の意見が寄せられ、経過措置に賛成が42件、反対が1146件で、その他「郵便等販売の規制をするべきでない」等の意見が8636件だった。
結果を受けて厚労省医薬食品局の川尻良夫総務課長は、「数字より、われわれが気づかなかった点があれば勘案するという観点で見たが、現時点では変える必要はないと判断した」と説明した。
これに対し三木谷委員、後藤玄利委員(日本オンラインドラッグ協会理事長)らネット推進派は、販売規制そのものに否定的な見方が多いことを挙げ、継続使用以外の新たな販売を、離島に限定する方針を変えない厚労省の姿勢を批判した。
全く逆の立場に立つ慎重派の阿南久委員(全国消費者団体連絡会事務局長)も、離島や継続使用者の特例的な取扱いを問題視し、反対意見のうち692件が経過措置を不要としていることを理由に、「なぜ経過措置を認めることになるのか理解できない」と発言した。
また、足高慶宣委員(日本置き薬協会理事長)は、原則通り対面販売を徹底するよう求めた。望月眞弓委員(慶應義塾大薬学部教授)も、対面販売の重要性を唱え、「対面原則に矛盾を発生させる」として経過措置に反対を表明した上で、例外的に通信販売を行う場合には、薬局等がない離島の居住者や継続使用者であることを的確に確認する必要があると強調した。
最終的に井村座長が、「コンセンサスを得ることは極めて難しい」と述べ、経過措置は厚労省の責任で行い、検討会としては意見を羅列するにとどめることで議論を収拾。さらに、日本薬剤師会など各団体が進める入手困難者への医薬品供給の取り組みについて、「最大限の努力をしていただきたい」と期待を込め、厚労省には、「一連の検討は、安全な医薬品の提供を大前提として話を進めてきた。例え周りでどのような騒ぎが起きようと、安全供給のために外せないと思って出された施策は勇気を持って進めてほしい」と注文した。
会議終了後、検討会委員の児玉孝日薬会長は、離島や継続利用者に対する2年間の経過措置について、「どれだけ安全に医薬品を供給できるか試される2年間になる。これはわれわれに与えられた宿題であり、具体的にどのように対応していくか、ロードマップを作成し、示していかなければならない」と語った。
一方、三木谷氏は、経過措置が決まった経緯について、「法律なら仕方ないが、省令でこんなことを決めていいのか」と不快感を示すと共に、検討会の議論に加わった成果を「ゼロ」と評した。