英国CROのリッチモンド・ファーマコロジーは6月4日午後2時から約4時間、日本橋ライフサイエンスハブでセミナーを開催。日英の規制当局者などが参加し、日本人患者が英国で治療(遺伝子治療薬の治験)を受け、帰国後に継続観察を実施するという治験モデルの有用性などについて議論した。

モデレーターを務めたのは、リッチモンド社の規制戦略ディレクターであるリサ・キャンベル氏。「英国は遺伝子治療の最前線にあり、日本の治験ネットワークと連携することで、日本人患者の早期治療へのアクセスと国際開発の加速が可能になる」と述べ、議論の方向性を提示した。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)細胞・組織医療製品部長の丸山良亮氏は、日本における遺伝子治療製品の規制状況と審査方針について、「科学的妥当性に基づく柔軟な評価」が鍵であるとし、また、英国との協働に対して国際共同治験や治療アクセスの観点から議論を進めることに前向きな姿勢を示した。
英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)臨床試験部門長のキングイン・リー氏は、免疫機構として機能しているDNA領域のクリスパー(CRISPR)を利用した製品の承認事例を紹介し、この中でILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)やSAWP(The Scientific Advice Working Party)といった革新的な新薬を迅速に承認支援する制度の有用性を強調し、日本企業もこうした制度を利用することで、開発の質と効率を高められると提案した。
非臨床分野におけるリスク評価については、元MHRAの最上級非臨床評価担当者で、現在独立系ファーマコ・トキシコロジー・コンサルタントとして活動しているデイビッド・ジョーンズ氏が、「科学的根拠に基づく規制対話が日英共通の課題」と語った。
倫理審査の観点からは、英国保健研究疔(HRA)の上級開発マネージャーを務めるキャサリン・ブルエット氏が、いわゆる越境治療であっても透明性と説明責任が確保できれば柔軟な対応が可能だと述べた。
リッチモンド社のCEOヨーク・ドーブル氏は、遺伝子編集治療の特性を活かした“ハブ&スポーク”型の試験運営により、すでに6つの治療プログラムで150名以上の患者を対象にin-vivo治療試験を実施していると自社の実績を紹介した。その上で、日本企業に対しては「日本人患者の治療への早期アクセス、臨床経験の蓄積、商業的成功」の3点を英国との治験を選ぶ価値として提示した。
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