【学校法人医学アカデミーグループ薬学ゼミナール】患者情報から個別最適化につなげよう

2025年11月15日 (土)
生物科目責任者 真柄 詩織、薬理科目責任者 猪又 雄太、治療科目責任者 安澤 寛

 薬剤師には、処方箋に記載された検査値や、マイナンバーカード情報から得られる様々な患者情報から必要な個別情報を読み取り、個別最適化した薬物治療の実践に反映する能力が、今後ますます求められます。2022年度改訂の薬学教育モデル・コア・カリキュラムでも「薬物治療の個別最適化」が学修項目として挙げられ、関連する問題は既に薬剤師国家試験(国試)でも出題されています。

 そのような背景から近年の国試でも、症例や症候、処方薬、検査値(遺伝子検査含む)などの多くの情報の中から、必要な情報を取捨選択し、副作用の早期発見や処方変更の提案につなげていくことを想定した問題が出題されています。今回は、「薬物治療の個別最適化」を学修するためのアプローチについて、薬学ゼミナールの科目責任者が最新国試の問題を例に紹介します。
(各問題の解答番号は問291解説の最後に記載)

生物

110回国試 問224―225

科目の出題傾向、解き方のポイント

 本問では、用いられる治療薬から本患者に実施されたコンパニオン診断の検査項目を推測する必要があります。代表的な抗悪性腫瘍薬と処方前に必要な遺伝子検査の項目の組み合わせを整理すると共に、その項目を検査する目的を確認しましょう。

 本患者の治療薬として選択されたセツキシマブは「RAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」に対して用いられるため、コンパニオン診断ではRAS遺伝子を検査項目とし、本遺伝子に変異がないことを確認した上で使用されます。

 本問のように、近年の国試の実践問題では、生物の知識に加え、薬理や病態、薬物治療とのつながりを意識した出題が増加しています。生物の既出問題の理解に加え、他科目を学修する際に生物に関連する用語が出てきた場合は、生物の青本(参考書)で確認するなど、日頃から科目をまたいだ学修を進めましょう。また、他科目とのつながりが深い「解剖・生理学」は生物の中で最も出題数が多い領域です。まずは「解剖・生理学」の早期完遂を目指しましょう。

薬理

110回国試 問258―259

科目の出題傾向、解き方のポイント

 本問は、患者のお薬手帳の内容から治療中の疾患を推定し、それを踏まえて今回診断された疾患に対する処方薬を「作用機序」から吟味し、処方提案を考える問題です。それでは、解き方のポイントを確認してみましょう。

 まず、患者のお薬手帳に記載されている薬物の作用機序を考えてみましょう。ラタノプロストとドルゾラミドは眼房水を調整して眼圧を低下させる薬物であるため、治療中の疾患は緑内障である可能性が高いです。

 次に、過活動膀胱への改善効果を持ちつつ、眼圧上昇が起きにくい作用機序を推定しましょう。作用機序から具体的な薬物名を想像することも重要ですが、作用機序だけで考えられるようになると解ける問題の幅が広がります。

 本問では、「薬物名」に依存せず、作用機序から薬理作用や患者の疾患、悪影響を推定する力が求められています。例えば、「ソリフェナシンは過活動膀胱治療薬である」と断片的に覚えるのではなく、「ソリフェナシン→アセチルコリンM3受容体遮断→膀胱排尿筋弛緩→過活動膀胱の症状改善」というように作用機序から一連の流れを説明できるようにしておくと、アセチルコリンM3受容体遮断(抗コリン)作用により眼圧を上昇させる可能性があることに気が付けます。この様に作用機序から副作用発生までの流れも理解できるようになれば、患者個々に適切な薬物を選ぶ問題(処方変更提案問題)にも柔軟に対応できるようになります。

治療

110回国試 問291(参考正答率62%)

科目の出題傾向、解き方のポイント

 本問は、C型慢性肝炎に対してウルソデオキシコール酸錠(処方2)に、レジパスビル・ソホスブビル配合錠(処方3)が追加された症例です。設問では、処方3追加時と2ヶ月後受診時の検査値が示され、変更すべき治療薬が問われています。

 選択肢1、3、4は、B型慢性肝炎の治療薬であるため除外できますが、選択肢2、5はC型慢性肝炎に適応があるため、検査値の変動から患者の状態を読み取る必要があります。本問では、検査値のうちeGFR低下から腎機能の悪化が読み取れるため、重度の腎機能障害に禁忌となるソホスブビルを含む配合剤(選択肢5)は不適切であると判断する必要があります。

 近年の国試では、本問のように検査値から患者の状況を判断して、適切な治療薬を選択させる問題が出題されており、処方変更の提案を見据えた薬物治療の個別最適化を意識した内容になっています。

 実際の医療現場では、同じ条件(年齢、性別、検査値、合併症や併用薬の有無など)を持つ患者が来局するわけではありません。そのため、それぞれの患者情報から必要な情報を取捨選択し、使用できない治療薬を判断することが重要になります。

 患者背景や併用薬を踏まえて解答する問題は、今後も継続して出題されると考えられます。このような問題に対応するためには、臨床現場で遭遇する頻度が高い疾患について、病態を正しく把握し、「なぜその薬物を用いるのか」を理解しておくことが大切です。さらに、合併症や併用薬といった患者背景を読み取った上で最適な治療薬を提案する力が求められています。そのため、実務実習や問題演習を通して疾患や薬物の特徴を学び、科目をまたいだ横断的な学修を進めていきましょう。

 解答(問224=解答4、問225=解答3、問258=解答3、問259=解答2、問291=解答2)

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