神戸医療産業都市推進機構は昨年暮、神戸市内のポートアイランドで「医療機器開発を成功に導く薬事戦略」をテーマとするセミナーを開いた。医薬品医療機器総合機構(PMDA)執行役員の石井健介氏が基調講演を行い、我が国の医療機器開発に対する見解を述べると共に、承認審査のポイントなどを説明。その中で石井氏はPMDAの取り組みとして、SaMDの早期実用化を促すため優先審査制度を試行的に導入しており、現在8製品が対象に指定されていることや、その他医療機器の承認審査全般として、レジストリデータで適応追加を承認する試みを始めていることなどを紹介した。
石井氏によれば、医療機器開発において薬事承認は通過点に過ぎず、開発者にとってのゴールは保険適用、マネタイズである。医療保険は主に税金や保険料で運営されているため、保険適用可否の判断に当たっては、その機器に国民が負担するだけの価値があるかが問われる。視点は患者のメリットであり、そこをエビデンスとして示すことが重要と指摘した。
医療機器の開発は医療現場のニーズがスタートと言われており、ニーズを満たす製品を開発すれば、一定の収益を確保し得る可能性が高いという。カテーテル関連のデバイスや透析機器などがニーズ指向に当たるとした。
一方でシーズ指向とは、まだ世に出ていない種を育て、自分で市場を開拓していく手法。成功すれば莫大な利益を期待できるが、失敗率が高く、資金の回収にも時間を要する。5G時代の遠隔手術ロボット、AIを活用した診断支援プログラム、脳にチップを入れて体を動かすブレインマシンインターフェースなどがシーズ指向の製品だという。石井氏は両者を比較し、医療機器開発には、シーズとニーズのバランスが大切だと述べた。
PMDAは第5期中期計画の大きな柱として、承認審査等の関連で(1)世界最速レベルの審査期間の維持、(2)医療現場のニーズに応えるイノベーションの早期実用化支援、(3)承認までの更なる予見性の確保と情報発信の強化、(4)プログラム医療機器の特性や申請を踏まえた相談と審査体制の強化――などを打ち出しているという。
このうちプログラム医療機器は、ここ数年で約300品目が承認されており、国も早期の実用化を推進する方針を掲げている。PMDAもこれに呼応して、SaMDを専門的に審査する部門として「プログラム医療機器審査部」を設置している。優先審査に指定されたSaMDに関しては、審査期間6ヶ月を目標とすることにしており、現在8品目が対象に指定されているとした。
一方、レジストリデータの活用も進められている。単に比較対象として見るだけではなく、臨床試験の実施が難しいケースに対し、代替としてレジストリデータのみで適応追加を承認する試みも行われているとした。具体例として挙げたのが、90歳前後の高齢患者に対する大動脈弁で、海外の市販後データベースであるTVTレジストリのデータを用いて評価した事例。石井氏は「今後もTVTレジストリを用いた適応追加がなされるだろうとの見通しを示した。
レギュレーションが開発企業とPMDAとの共通言語とした上で、申請や相談の際には、「開発者が規制をどれだけ理解しているかが鍵になる」との認識を述べた。加えてPMDA側も、審査の透明性の確保と効率化を進める観点から、通知やガイダンス、審査ポイントなどを、積極的にホームページ上で公開していくとした。
このほか石井氏は、小児専用医療機器の開発に取り組んでほしいと要請した。小児専用の機器を製造している企業は少なく、一社が販売を中止すると使える製品がなくなってしまう場合がある。石井氏は「マネタイズの難しさはあるが、小児用の製造・開発が特に難しいわけではない。開発補助の仕組みもあるし、学会もバックアップしてくれるので、是非トライしてもらいたい」と訴えた。

















