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定着する医療見据えた薬学研究

2006年10月04日 (水)

 今年で16年目を迎えた日本医療薬学会が急成長を遂げている。1日まで金沢市で行われた年会は、地方都市開催にもかかわらず、4700人が参加したという。昨年も4100人が参加したが、ここ数年、会員数の増加と共に、年会の参加者は急増している。

 医療薬学、臨床薬学の領域では、日本薬学会のクリニカルファーマシー・シンポジウムが1985年に産声を上げ、20年以上にわたってパイオニア的役割を果たしてきた。それに対し、ここに来て日本医療薬学会への参加が急増しているのは、学会の考え方と実践が定着し、医療に従事する薬剤師等が、発表の場を求めていることが背景にあると思われる。とりわけ、大学からの参加が増えている点は注目される。日本の薬学も基礎研究中心から、医療との深い関わりの中での研究が、高まってきたことの現れといえよう。

 振り返ると日本医療薬学会は、入院調剤技術基本料、いわゆる“100点業務”が病薬業務の柱として確立された1988(昭和63)年に、当時の日本病院薬剤師会会長であった高橋則行氏が、日病薬の学術大会という性格で「日本病院薬学会」の設立を提案。そのリーダーシップの下に発足した。

 当初は日病薬の学会といった形式でスタートしたが、01年1月に日病薬が法人化30周年を迎えたのを契機に、「日本医療薬学会」と衣替えして門戸が広く開放された。「医療薬学」というキーワードの下で、幅広い会員が参加する学会として一本立ちを目指し、発展してきた。

 会員数は、昨年末で5160人と大台に乗り、今年8月末には5700人余、学生会員も145人で6000人に迫る勢いだ。会員数の急伸は、99年以降のことで、それまでは2000人程度であったが、右肩上がりに会員数を伸ばしてきた。

 実はこの99年は、都立病院で看護師が誤って消毒剤を注射し、患者が死亡したという事件が大きく報道された年である。その後も医療事故のニュースは絶えることがなく、皮肉にも医療リスク管理における薬剤師の重要性について、国民が意識を芽生えさせた時期でもある。

 秋の学会シーズンを迎え、医療薬学会のほか、来週には福井で日本薬剤師会学術大会、11月には横浜で第21回アジア薬剤師連合(FAPA)学術大会、日本保険薬局協会による第2回ファーマシーフォーラムも開催される。この間、県薬や病薬等の学術大会、種々の研修会も多数開かれる。中でもFAPA学術大会は、1966年に日本で最初に開かれた記念すべき大会であり、今回は80年の京都大会に次ぐ3度目の国内開催となる。

 ファーマシューティカル・ケアや医療薬学の重要性が唱えられてから、既に20年余が経過した。アジアにも欧米の強い影響を受け、「医療」が欧米並みという国が見られる。これからの学会シーズン、国内の仲間と討論、親交を深めることも大切だが、世界の流れに触れるのも良いのではないか。規制改革と医療費削減の圧力で、近視眼的な思考に陥りがちな今、新医療法による「次の時代」に向けて、新しい刺激が感じ取れるかもしれない。



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