
サイバーセキュリティ戦略の全体像
富士通は8月26日、生成AIの進化や企業システムの複雑化に対応し、企業のサイバー防衛能力を継続的に進化させるサイバーセキュリティ戦略を策定したと発表した。同戦略では、サイバーセキュリティをITシステム構築後の運用対策としてではなく、戦略立案、設計・開発、実装、運用、評価、改善までを一体的に捉えるサイバー防衛ライフサイクルとして実践していく。
サイバー防衛運用モデルは、次の四つのサブモデルを通じ、防衛対象、防御思想、防衛責任、防御レベルを体系的に整理し、対策の優先順位や必要となる投資を明確化することで、企業の防衛能力とサイバーレジリエンスの継続的な向上を支援する。
▽企業として守るべき対象を定義するFujitsu Cyber Defense Domain Modelでは、守る対象を機器の種類ではなく業務上の役割に基づいて捉え、IT領域に加え、監視カメラや医療設備などの物理領域を含む企業全体の防衛対象を定義している。
▽防御の基本思想を定義するFujitsu Cyber Defense Philosophy Modelでは、攻撃を完全に防ぐことだけを目的とせず、攻撃者の行動を遅らせることで防御側に時間的優位を生み出し、観測することで追加対策の実施などにつなげる「減速防御」の考え方を取り入れる。
▽企業を取り巻く関係性からサイバー防衛を定義するFujitsu Cyber Defense Relationship Modelでは、グループ会社やパートナー企業との関係性に応じて防衛責任や防御範囲を設計し、サプライチェーン全体のサイバーレジリエンス向上を目指していく。
▽防御レベルを定義するFujitsu Cyber Defense Proximity Modelでは、攻撃者の目的達成との距離に応じて必要な防衛活動を整理し、企業が目指すべき防御レベルやセキュリティ対策投資の優先順位を明確化する。
また、サイバー防衛運用モデルを実践するために、構築・運用・継続的改善を通じて実効性を高め続けるための実践的な枠組みであるサイバー防衛フレームワークを定義している。これにより、企業のサイバー防衛をITシステム構築後の運用対策だけでなく、戦略立案、設計・開発段階から運用、改善までを含めたサイバー防衛ライフサイクルとして実践することが可能になる。さらに、高性能AIを活用した脆弱性診断および「Project YATA-Shield」への貢献なども目指す。
また、同フレームワークを実行する中で得られるデータから脅威やリスクを感知し、観測・分析結果を可視化することで、個々の防衛活動を方向づけ、現場の自律的な実行サイクルを促すための仕組みとしてCyber Nerve Systemを構築する。
サイバーセキュリティ戦略の中核となるNerve Centerrは、Cyber Nerve Systemの戦略・方針の策定や、Cyber Nerve Systemから得られる客観的な評価やエビデンスに基づき、システム停止やサイバー防衛の優先順位・投資方針などの経営陣への報告・提言をすることで意思決定の支援を行う100人規模のバーチャル組織。
また、富士通研究所やUvance Wayfinders、サービス開発部門、ミドルウェア開発部門、デリバリー部門の知見や技術を結集することで、技術導入やサービス開発を含めたサイバーセキュリティ戦略を横断的に推進していく。さらに、市場環境や脅威動向を踏まえながら、スタートアップや外部パートナーなどからも新たな技術を取り込み、同社自身のサイバーセキュリティ戦略へ反映させる。
既に実践・検証を進めている高性能AIを活用するだけでなく、同社がカスタマーゼロとして培った実践知や顧客環境からのフィードバックを組み合わせ、Cyber Nerve Systemや各種サービスへ反映することで、企業の防衛能力そのものを継続的に進化させていくことを目指している。
さらに、こうした実践知をもとに、AI脅威ハンティングやAIレッドチームオペレーションなどの高度なサイバー防御機能のサービス化を推進する。
サイバー防衛を支える高度専門人材の育成については、富士通のセキュリティマイスターを通じてサイバーセキュリティ人材の育成を推進する。Nerve Centerで蓄積された実践知や最新の脅威分析結果、実際の防衛活動から得られた知見を教育プログラムへ継続的に反映することで、社内ホワイトハッカーやセキュリティアーキテクトなどの高度専門人材を育成し、AI時代のサイバー防衛を担う人材基盤を強化する。
同社は今後、Nerve Centerを中核組織として、AI時代に即した企業のサイバーセキュリティ戦略を推進していく。同戦略のもと、実践知を生かしたコンサルティングやシステム構築・運用サービス、AI活用型防衛サービスを段階的に提供することで、顧客のサイバーレジリエンス向上に貢献していく。
さらに、高度監視・自動対処やAIエージェントによる顧客環境への実装支援などのサービスやソリューションを拡充すると共に、大規模言語モデル「Takane」を含む自社技術との融合により、企業やサプライチェーン全体を支える次世代サイバー防衛基盤へ発展させていく。
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