AIでICSR処理刷新‐実装から変革まで伴走

佐藤氏
新薬開発の難易度上昇や開発費の増大を背景に、製薬企業は全社的な業務効率化を迫られている。その状況下、PVは医薬品の安全性を継続的に監視し患者の安全を守るための業務であるため、コンプライアンス遵守と専門性の維持を両立する体制が必要であり、単純なコスト削減の理論だけでは改革を進めることが難しかった。しかし今、AIの急速な進化がその前提を大きく変えようとしている。こうした中、アクセンチュアはAIを活用しPVのICSR処理の変革に向けた取り組みを進めている。
ICSR処理の改革を阻む要因として、同社はコンプライアンスと専門性の「二つの壁」を挙げる。第一の壁はコンプライアンスだ。データベースベンダーによる内部自動化は一定の成果を上げているが、外部ツールとの連携でさらなる効率化を図ろうとすると、症例情報に含まれる患者の個人情報保護やセキュリティ要件が高い壁となる。第二の壁は専門性である。因果関係の医学的評価や日英両言語への対応、症例ごとに異なる判断を担える高度な専門人材の確保は容易ではない。
こうした二つの壁を越える解決策が、AIによるICSR処理の刷新である。近年のAIの飛躍的進化により、専門人材でなければ担えなかった領域までAIが代替できるレベルに至った。ただし実務に耐えられるAI実装には、「安全性基準の定義」「AIによる技術実現」「業務変革の実行」を同時に満たす必要があり、製薬企業単独では難しい。
そこで、製薬企業、データベースベンダー、業務変革・実行パートナーが役割を分担し協業する体制が一つの解決策となる。近年同社は、業務変革・実行パートナーとして、このモデルでデータベースベンダーと協力しながら、AI実装からプロセス変革まで一気通貫で製薬企業に伴走した。
結果としてグローバル症例では原資料の大部分をAIが処理対象とし、E2B項目のうち過半数を完全自動化した。医学的判断・言語対応・コーディングをAIが担うことで、24時間365日のリアルタイム処理が現実になりつつある。
一方、日本語症例ではAI処理対象の原資料がグローバルより少ない傾向にある。漢字・ひらがな・カタカナが混在し単語の区切りが明確でない言語構造が英語前提のAI処理を難しくするほか、医療現場の表記揺れやMedDRA/Jの独自ルール、PMDA細則への対応も壁となる。
そこで同社は、豊富なAI人材・業界特化型AIエージェントの実装実績に裏打ちされた業務変革のケイパビリティと、15年以上にわたり培ってきた日本語処理の深い知見を掛け合わせ、日本語症例に特化したAI開発を急ピッチで実施している。日本語医薬文書特有の複雑さやPMDA細則に対応した検証ロジックを構築し、規制変更に応じてAIを継続的に改善できる運用体制の実現を目指す。
同社のPVサービスを統括する佐藤加奈子氏は「AIの判断をどう制御し、規制要件に対して正誤をどう担保するかという検証・運用設計が重要だ。継続的に検証しチューニングできる能力が実運用の成否を左右する。製薬企業に伴走しながら、より高度なICSR処理の実現を支援していきたい」と話す。
同社はデータベースに依存しないAI開発に加え、データベースベンダーとの協業も視野に入れながら、ICSR処理全体へのAIエージェント適用を検討し、2026年中のサービス化に向けて取り組みを進めている。
アクセンチュア
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