順天堂大学はこのほど、科学技術振興機構(JST)が公募した「AI for Science 革新的研究推進事業(ARiSE)」の戦略ターゲット型「T2」で、同大が取り組む研究開発課題「形態学的デジタルツイン:ヒト3D生体システムの統合AI基盤モデル」が採択されたと発表した。全国19グループが参画するオールジャパン体制で、ヒト組織の3次元形態画像とマルチモーダル情報を統合する世界初の「3D-Native バイオ基盤モデル」を開発し、日本のAI for Science 先進国としての地位確立に貢献するプロジェクトを開始する。
今回の研究は、
▽標準プロトコル(SOP)の確立とデータ基盤整備:ヒト3D生体組織解析の標準プロトコルを確立し、全国11拠点の「ヒト3D生体解析ローカル拠点」に展開して、AI学習用の大規模データを収集する(Human VoxelBio Initiative)
▽3D-Nativeバイオ基盤モデルの開発:3D組織画像の自己教師学習、X線・空間オミクスとの統合、病態の動態予測までを担う複数のAIモデル群を開発する。
▽第三者評価と国際ベンチマークの確立:2次元モデルとの比較により3次元化がもたらす情報利得を定量的に実証し、国際的な評価基盤を構築する。
――の三つを連携させて進めていく。
研究チームはこれまでに、ヒト組織の透明化技術、3D「H&E染色法」、および専用ライトシート顕微鏡の開発を進め、全国の病理検査室への標準プロトコル頒布体制を構築してきた。生体組織を立体のまま学習する基盤モデルの開発に本格的に取り組む試みは、国内外にほとんど例がなく、この点が今回の研究の新規性となっている。
今回の研究の2.5年間の目標は、「形態学的デジタルツイン」のプロトタイプ(PoC)を完成させること。開発する基盤モデルは、がん微小病変の見落とし低減や脈管侵襲の正確な評価など、2次元では捉えられなかった診断精度の向上に貢献するものと期待されている。
課題となるのは、大規模な3D組織データの収集と、それを学習できる計算基盤の整備が挙げられる。同研究では、全国の拠点によるデータ収集体制の構築と、最新GPU計算資源を組み合わせ並行して進めていく。
また、研究の成果は、製薬企業と連携した創薬標的の探索や、CT・MRIなど非侵襲画像からの疾患リスク領域の高精度予測への応用が期待される。さらに、開発する標準プロトコルや3D解析技術は、他の研究分野にも活用可能で、研究終了後(2028~30年頃)には、同研究の成果をもとにしたスタートアップの設立も計画しており、日本発の3D生体空間解析技術による新市場の創出を目指していく。
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