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【医薬品特許】後発品使用促進に「思わぬ逆風」‐薬事法と特許法がせめぎ合い

2009年7月10日 (金)

 厚生労働省が6月5日付で発出した「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取り扱いについて」の通知は、あいまいだった後発品の承認基準を明確化し、後発品の使用促進に期待が高まった。ところが、新たに医薬品の用法・用量の特許化を打ち出す「知的財産推進計画2009」が策定され、追い風ムードが一気に逆転した。特に先発品の用法・用量の特許化に当たって、意見表明の機会すら与えられず、蚊帳の外に置かれた後発品メーカーは強く反発。日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)知的財産研究委員会の八久牛義雄委員長は、「後発品メーカーが有利な状況は全くない。むしろ特許法上は、先発品擁護の方向にあるのではないか」と不満を隠さない。後発品の承認範囲を拡大した薬事法、イノベーション促進する特許法の狭間で、後発品の使用促進策が揺さぶられている。

 これまで厚労省は、先発品の物質特許が失効していても用途特許が残っている場合は、事実上、後発品の承認を先送りしてきた。しかし通知では、一部の効能・効果に用途特許が残存していたとしても、薬事法の原則に基づき、後発品を承認する方針を明確に示した。こうした動きに、後発品メーカーは「今までジェネリック薬の使用促進に逆行するような運用がなされていたので、通知は非常に歓迎すべき内容」との意向を表明していた。

 最も象徴的なのが、現在、係争中のレボフロキサシンの後発品をめぐる特許侵害差止訴訟だ。レジオネラ属の効能・効果取得による特許延長の是非が争点となっているが、こうしたケースも今回の通知では後発品の承認を認めるとの方針。

 従来、再審査期間がないような効能を追加しても用途特許として保護され、後発品が承認されなかったため、「公知申請で簡単な効能を取るほど先発メーカーは有利」と不満の声がくすぶっていた。それだけに通知は、後発品メーカーが承認申請を行いやすくする内容で、後発品の使用促進に向け、さらに弾みがつく格好となった。

 ただ、通知では「先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと」としている。最近になって、物質の結晶特許が後発品の排除に働いた例もあり、今後、「結晶特許を理由に後発品を承認するのかどうか」不明瞭な点も残されている。

 一方、特許法では、特許期間中の先発品に新たな効能追加が認められれば、特許期間が延長されることになっている。東和薬品管理本部法務部長の佐藤有三氏は、「今回の通知は、こうした特許法の矛盾点を薬事法が正したとも言えるが、後発品の効能・効果が違う“歯抜け”を解消するためには、特許法上の対応が必要になる」との見方を示す。

 ところが政府は、医薬品の用法・用量の特許化を重点施策とした「知財推進計画09」を打ち出し、波紋が広がった。年内には特許法の審査基準が改定される見通しだが、医薬品の用法・用量が特許化されると、後発品メーカーに大きな影響を与えるのは必至。それにも関わらず、用法・用量の特許化を決定した先端医療特許検討委員会でGE薬協は意見表明の機会も与えられなかった。

 蚊帳の外に置かれた格好のGE薬協は強く反発。佐藤氏は、「最も影響が及ぶジェネリック業界に対して、何ら説明も相談もなかった」と不快感を示す。そのためGE薬協は、同委員会に提出したパブリックコメントの中で、骨粗鬆症治療薬「フォサマック錠」5mgと週1回製剤の35mgを例に挙げ、安易な用法・用量の特許化をけん制。八久氏は「1週間製剤の35mg錠が特許化されれば、われわれが35mg錠の後発品を発売するときには薬価が低下し、既存の5mg錠はほとんど売れないという壊滅的な状況になりかねない」と指摘する。

 今後、特許法の審査基準の改定作業の中で、こうした用法・用量の特許性をどう判断するかが議論されると見られるが、既に用法・用量の特許化は決定事項。先発品メーカーは、用途特許の延長に代わって用法・用量の特許化を目指してくることが予想される。

 さらに5月29日には、武田薬品と特許庁が争っていた徐放剤モルヒネ製剤「パシーフカプセル30mg」に関する製剤特許に対し、知的財産高等裁判所が特許期間の延長を認める判決を下した。これまでは、新医薬品の有効成分と効能に新規性が認められた場合に、特許期間の延長が認められていた。しかし、この判決が適用されると、有効成分と効能・効果が同一でも、製剤に新規性があれば、特許延長を認める方向に拡大することになる。

 こうした状況を見ると、後発品の使用促進に対し、特許法上は知財高裁の判決を含め、逆風が吹いているように写る。ただ、特許は発明を保護する制度。同じ政府の施策であるイノベーション促進と後発品の使用促進は、もともと兼ね合いが難しい側面があるのも事実だ。用法・用量の特許化、製剤特許による特許延長の流れは、決して後発品の使用促進に有利な追い風とはなっていないが、新たな特許化との整合性をどう取るのか。政府に重い難題が突きつけられている。

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