
阿曽沼慎司医政局長
厚生労働省の阿曽沼慎司医政局長は4日、就任会見を開き、医療政策や医薬品医療機器産業育成を指揮するに当たっての抱負を語った。医療の高度化や多様化に対応するため、薬剤師を含むチーム医療のあり方を検討する場を、8月中をメドに立ち上げる考えを明らかにした。また、後発品使用促進については、普及が進まなければ「製薬業界自体が筋肉質になっていかない」と指摘し、処方せんを作成する医師や調剤薬局が鍵になるとの認識を披露。製薬企業の国際競争力強化には、「当事者としてアクセルを踏むのは大変重要」と積極姿勢を示した。
阿曽沼氏の医政局長就任は、医系技官ポストに、初めて事務系が就く、目玉人事の一つ。ただ、阿曽沼氏は入省時に当時の医務局に配属となり、その後、医政局の前身である健康政策局の経験もある。そのため会見では、「違和感はない。この局の雰囲気、たたずまいは分かっているつもり」と感想を述べ、「よく医療現場の事情を聞いた上で対応していきたい」とした。
医療を取り巻く課題については、医師の不足・偏在問題や、小児・周産期・救急医療を最大の焦点に挙げたが、チーム医療の推進にも意欲をみせた。
チーム医療をめぐっては“基本方針2009”が、医師と看護師等の役割分担見直しについて、専門家会議で検討し、今年度中に具体策をまとめるよう指示していることを受け、医政局に検討会を設置して対応する。
検討会では、基本方針2009が念頭に置いている、ナースプラクティショナー(一部の診断や処方を行う専門看護師)導入の可否にとどまらず、質の高い医療を効率的に提供するための方策について、広く現場の意見を吸い上げる意向だ。
後発品については、経済課長、医薬食品局長を歴任した経緯もあって造詣が深い。数量シェア30%の政府目標達成に向け、「とくにかく着実に進めたい」と意欲を示した。
後発品で課題となっている、▽安定供給▽品質▽情報提供にも言及し、「厚労省が認可しているのだから、品質に問題はない。情報提供も行われている。最大の問題は安定供給だが、相当改善されているので、絶対推進する。そうでないと、製薬業界自体が筋肉質になっていかない」と指摘。普及のポイントついては、「処方する医師と調剤薬局が鍵になる」とした。
産業政策の観点からは、「資源がなく、食料自給率も40%ほどしかない日本が、世界に誇れるのは人。医薬品・医療機器産業の分野は向いている」とし、「イノベーティブな薬やデバイスが出てくるのは、日本の産業にとって大事なこと。それにアクセルを踏むのは当事者として大変重要だと思う」と語った。