内閣府の健康研究推進会議は、「健康研究推進戦略」をまとめた。今後10年程度で実現する目標に、▽革新的創薬技術等の実用化▽革新的医療機器等の実用化▽新しい複合治療技術の展開▽健康研究を支える領域の強化--の4項目を位置づけた。また、3~5年程度をメドに取り組む課題としては、再生医療や医薬品開発の拠点整備、医薬工の融合領域を担う人材の確保・育成などを挙た。今後、厚生労働省、文部科学省、経済産業省が連携し、施策を進める。
会議は、厚労、文科、経産の3大臣、内閣府特命担当大臣のほか、有識者として総合科学技術会議議員 の本庶佑氏で構成。学識者や産業界の代表が参画するアドバイザリーボードの提言を踏まえて戦略を策定した。
将来的に実現する目標のうち、革新的創薬技術では、個人の体質に合い、効果が高く副作用の少ない癌、心臓病、脳卒中、糖尿病の治療薬や、認知症等の超早期診断法・治療薬の開発をするほか、iPS細胞を活用した再生医療の実用化を目指す。また、病態や疾患メカニズムも解明する。
革新的医療機器については、放射線治療・内視鏡手術等の低侵襲的手法の開発や、人工臓器・組織の実用化を目指す。
複合治療技術の展開では、薬剤と治療用デバイスの複合体や、再生医療技術を組み込んだハイブリッド人工心臓など分野を融合した技術を開発する。
こうした成果を産み出すために、早急に取り組むべき重点課題としては、[1]研究拠点の整備[2]橋渡し研究・臨床研究に従事する人材の確保・育成[3]研究を支える領域の強化[4]研究開発成果の社会還元の推進--の4項目を示した。
[1]研究拠点の整備では、再生医療や医薬品など、特に期待が大きい分野の重点化を図る。また、研究拠点を活用し、開発戦略・知的財産戦略の策定、試験薬等の品質管理、非臨床試験の支援を行う。プロトコル作成支援や臨床データ処理の一元的実施が可能なデータセンターを整備し、会計・経理・契約を担当する事務スタッフの確保にも取り組む。
さらに、研究拠点が臨床研究に用いる試験薬や細胞等の製造・調製に必要な経費について、研究費で手当てできる範囲や、薬事法の適用範囲を周知する。
また、広く研究者や研究機関を支援し、民間企業とも連携するなど、誰でも活用が可能な拠点としての機能を充実させる。
[2]人材の確保・育成では、再生医療や医療機器の臨床研究など、医薬工が融合した領域に対応可能な人材を重点的に確保・育成する。育成した人材が意欲的に活躍できるよう、キャリアパス確保についても検討を進めるほか、研究機関と企業・審査機関の間の人事交流の活性化も図っていく。
[3]研究を支える領域の強化については、大規模疫学調査と超高速遺伝子解析技術を融合した研究や、研究で得た情報の統合的シミュレーション研究を実施する。健康研究・安全対策に活用できるデータベースの整備や、医薬品・医療機器等の有用性・安全性の迅速評価の研究など、レギュラトリーサイエンスの強化を進める。
[4]社会還元では、実用化のスピードを上げる。新たな創薬手法の開発研究を進めて医薬品開発過程を迅速化・効率化するための技術基盤を確立するほか、承認申請に向けた薬事相談の活用や審査体制の整備を実施する。また、スーパー特区推進による革新的医薬品等の実用化などに取り組んでいく。