厚生労働省は新医薬品7成分11品目を、9月4日付で薬価基準へ追補収載する。内訳は内用薬5成分9品目、注射薬2成分2品目。26日の中央社会保険医療協議会総会で、薬価算定組織が報告し、了承された。原価計算方式による算定はアボルブカプセルのみで、残る6成分は類似薬効比較方式を適用した。配合剤のカデュエットについては、従来の単剤2成分の合計1日薬価合わせではなく、比較薬を1成分に絞り、配合の効果は有用性加算で評価。約10年ぶりに新規作用機序を持つ降圧剤として注目されるラジレスに、補正加算はつかなかった。
ラジレスに補正つかず
▽レメロン錠15mg(シェリング・プラウ)、リフレックス錠15mg(明治製菓):有効成分はミルタザピン。両社が共同開発したノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬。既存の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)に似ているが、作用機序は異なる。類似薬効比較方式Iで算定。申請者からはSSRIのパキシルとの1日薬価合わせの申し出があったが、比較薬にはパキシルのほか、SNRIのトレドミンを選び、2剤の1日薬価を相加平均して算定した。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が16・2万人で32・9億円、ピーク時の5年目が55・3万人で258・8億円。
▽ラジレス錠150mg(ノバルティス・ファーマ):有効成分はアリスキレンフマル酸塩。レニン系サイクルの起点に位置する酵素のレニンを、直接的に阻害する高血圧症治療薬。臨床試験では、1日1回の投与で、24時間以上の降圧効果が得られている。類似薬効比較方式Iで算定。 企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が7300人で3・7億円、ピーク時の10年目が57万3600人で289・1億円。
▽カデュエット配合錠1番、同2番、同3番、同4番(ファイザー):有効成分として持続性カルシウム拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩と、HMG還元酵素阻害剤のアトルバスタチンカルシウム水和物を含有する配合剤。
高血圧症と高脂血症の治療を、1錠で可能にした世界初の薬剤で、配合意義として、高血圧症治療と高コレステロール血症治療の最終エンドポイントである脳・心血管疾患の発症抑制に対して、各単剤を上回る有効性を示すことが認められた。なお、アムロジピン2・5mg、5mgとアトルバスタチン5mg、10mgの組み合わせで、1~4番を販売名に付けている。
アトルバスタチンを成分とするリピトールを比較薬とし、類似薬効比較方式IIで算定。アムロジピンを上乗せした効果を有用性加算mg(30%)で評価し、外国平均価格調整による引き上げた。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が2・9万人で4・4億円、ピーク時の6年目が43・7万人で201・5億円。
▽アボルブカプセル0・5mg(グラクソ・スミスクライン):有効成分はデュタステリドで、5α還元酵素阻害作用を持つ新規前立腺肥大症治療薬。I型・II型の5α還元酵素を阻害することで、男性ホルモンのテストステロンから高活性物質のジヒドロテストステロンへの変換を抑制するという新たな作用機序によって、肥大した前立腺を縮小させ、下部尿路症状の軽減や尿流の改善を実現する。
同様の効能・効果等を持つ類似薬がないため、原価計算方式で算定。営業利益率として23・0%が認められた。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が3・2万人で5・6億円、ピーク時の10年目が34・4万人で181・3億円。
▽ルミガン点眼液0・03%(千寿製薬):有効成分はビマトプロスト。緑内障および高眼圧症の治療薬で、まつげが伸長する副作用がある。類似薬効比較方式IIで算定した。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が4・1万人で12億円、ピーク時の5年目が13万人で75億円。
▽アズマネックスツイストヘラー100μg60吸入(シェリング・プラウ):有効成分はモメタゾンフランカルボン酸エステル。気管支喘息を効能・効果とする定量式吸入用散剤。類似薬効比較方式IIで算定した。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が4・7万人で2・5億円、ピーク時の5年目が28・3万人で27・8億円。
▽プリジスタナイーブ錠400mg(ヤンセン・ファーマ):有効成分はダルナビルエタノール付加物。HIV感染症を効能・効果とする,オーファン指定の新用量医薬品。類似薬効比較方式Iで算定し、市場性加算(10%)がついたが、既に類似の薬理作用を有する抗HIV薬が多く収載されているため、限定的な評価となった。
企業が予測する投与患者数と販売規模は、初年度が172人で2億円、ピーク時の10年目が4656人で31億円。