大日本住友製薬は3日、米製薬企業「セプラコール」社を総額約26億ドル(約2400億円)で買収すると発表した。買収により、連結売上高が約2600億円から約3800億円、海外売上高比率が約8%から約40%に拡大すると共に、大型化が見込まれる統合失調症治療薬「ルラシドン」の上市に向け、米国での販売体制を構築する。多田正世社長は都内で会見し、「中枢神経領域を強みとするセプラコールの販売網を活用し、ルラシドン事業を最大化させたい」と述べ、海外事業に挑む決意を示した。
セプラコールは、1984年に設立された中枢神経領域、呼吸器領域などに特化した製薬企業で、昨年度の売上高は、12億9200万ドル(約1200億円)。睡眠導入剤「ルネスタ」や吸入喘息薬「ゾペネックス」を含む6製品を発売しており、研究・開発・当局対応・製造・マーケティング・販売の全機能を自社で持っている。
一方、大日本住友製薬は、ルラシドンを海外進出の足がかりと位置づけ、グローバル開発を進めてきた。既に第III相試験「PEARL1」「PEARL2」で良好な結果を得ており、ルラシドンの米国申請を当初予定より1年前倒しし、10年前半に行えるまでにこぎつけた。
11年の米国上市に向け、自社による販売拠点構築も視野に入れた米国自販体制の整備を検討してきたが、北米市場で中枢神経・呼吸器領域の開業医・専門医をカバーするセプラコールを買収し、米国での事業基盤強化を図る。
多田社長は、「既に中枢神経領域で実績があり、自社独自で販売拠点を構築するのに比べ、時間とコストを低減できる」と、買収によるシナジー効果を強調。「ルラシドンのポテンシャルを最大限に引き出すことができる」と、セプラコールの販売網を活用することで、ルラシドンの市場浸透を早期に実現できるとの考えを示した。
また、米国での販売体制に加え、セプラコールが持つ充実したパイプライン製品も獲得する。抗てんかん薬「ステデサ」は米FDAに申請中、アレルギー性疾患治療薬「オンナリス」は第III相試験段階にあり、抗うつ薬やCOPD治療薬など、早期開発段階にも複数の開発品目を擁する。多田社長は、「開発早期から後期段階まで切れ目のないパイプラインを持っており、それらは将来の業績に貢献してくれる」とし、ルラシドンに続く製品群の開発を進め、米国での事業基盤の強化を図る方針だ。
昨年、国内大手による海外製薬企業の買収が相次いだが、準大手にもグローバル化の流れが波及している。昨年9月に、塩野義製薬が米サイエルを買収したほか、大塚製薬や小野薬品もグローバル化の方針を打ち出している。さらに、今年に入り、久光製薬が米ノーベン・ファーマシューティカルズ、ゼリア新薬がスイスのティロッツ・ファーマを買収するなど、国内中堅でも海外展開に乗り出す企業が出てきた。今回の買収を引き金に、準大手・中堅製薬企業の海外シフトがさらに加速する可能性がある。