日本薬剤師会は、2005年度から全国11地区で実施していた、薬薬連携推進モデル事業の総括報告書をまとめた。事業では、日薬が作成した「薬剤適性使用のための施設間情報連絡書」(連絡書)を用い、病院・薬局薬剤師が患者情報を共有することで、一貫性のある薬物療法の提供と、安全性の向上を図った。報告書では、そうした薬薬連携の有用性を示すと共に、退院時服薬指導書やお薬手帳のさらなる普及・啓発が必要だと指摘。また、薬剤師自身が薬薬連携の有用性を十分理解・認識していないことも課題だとしている。
報告書では、有用事例の評価や考察を、[1]患者の退院時[2]入院時[3]その他(外来医療・在宅医療における患者情報の共有など)--の場面別にまとめた。
そのうち、実際に連携を行った薬剤師が「有用性が高い」と評価した情報としては、薬局薬剤師・病院薬剤師ともに、▽患者の使用薬剤▽調剤方法▽コンプライアンス▽副作用歴・アレルギー歴等--に関するものが上位を占めた。
場面別でみると、退院時では、使用薬剤(用法・用量、調剤方法を含む)の情報が、重複投薬や相互作用、禁忌薬剤の回避に役立つとされた。
一方、入院時では、持参薬を確認する際に、お薬手帳や「薬剤情報提供書」を参考にしているが、▽情報が最新でない▽持参薬忘れ▽用法・用量や規格が不明瞭--なども実態が見られ、今後の問題として指摘された。
その他の場面では、積極的に連携し、癌化学療法を支援する取り組みが新潟市薬剤師会、浜松市薬剤師会ほか3地区の事例として示された。
また報告書では、薬薬連携を促進するための課題についても触れている。連絡書の意義が患者に伝わっていない事例などを紹介し、連絡書、退院時指導書・お薬手帳などの意義を、患者に啓発していく必要があるとした。
それに加え、薬薬連携の有用性が薬剤師に十分浸透していない状況も見られることからり、広く啓発する必要性も強調。さらに、連携は地域医療体制の中で「薬の一元管理」の観点から非常に重要であり、相互の立場を理解し、これまで以上に協力・連携していく必要があるとした。