総務省の「2009年科学技術研究調査」によると、08年度の科学技術研究費の総額は、前年度比0・8%減の18兆8001億円で、9年振りに減少した。ただ、「医薬品製造業」については、1兆2956億円と前年度よりも増加した。また、重点推進4分野については、「ライフサイエンス」「環境」「ナノテクノロジー・材料」が前年度より増加したのに対し、「情報通信」は減少した。
調査は、科学技術の振興に必要な基礎資料を得ることを目的に、毎年実施されている。対象は、企業等が約1万3600(回答率約79%)、非営利団体・公的機関等が約1100(同99%)、大学等が約3600(同100%)の合計約1万8300機関。
それによると、研究費の対GDP比率は、3・78%と過去最高を記録。主要国の中で最も高い水準となった。07年度時点では、韓国3・47%、米国2・68%、ドイツ2・54%などとなっている。
研究費のうち、自然科学に使用されたのは17兆4078億円(前年度比0・8%減)で、全体に占める割合は92・6%だった。内訳は、開発研究費が10兆9499億円、応用研究費が4兆652億円、基礎研究が2兆3927億円で、開発研究費が群を抜いている。
研究主体別では、企業等が13兆6345億円、非営利団体・公的機関等が1兆7206億円、大学等が3兆4450億円で、前年度に比べ、企業は1・4%減少したが、非営利団体・公的機関は1・8%、大学は0・6%増加した。
全体の約7割を占める企業等の研究費を細かくみると、「製造業」が11兆8831億円と突出して多く、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」が8570億円となっている。「製造業」のうち、「医薬品製造業」は1兆2956億円(前年度比3・3%増)で、製造業全体に占める割合は9・5%と4番目に高かった。
医薬品製造業の研究費配分としては、開発研究に6615億円(構成比51・1%)、応用研究に3873億円(29・9%)、基礎研究に2498億円(19・0%)を投入していた。特徴的なのは基礎研究への投入で、構成比で19%を占めているのは、製造業の中では最も高く、全産業を通しても放送業に次いで2番目だった。
一方、全研究費についてみると、科学技術基本計画の重点推進4分野の▽ライフサイエンス▽情報通信▽環境▽ナノテクノロジー・材料--で、明暗が分かれた。
情報通信が3兆254億円と前年比4・0%減だったのに対し、ライフサイエンスは1・9%増の2兆7425億円、環境は2・6%増の1兆1055億円、テクノロジー・材料は6・9%増の9907億円だった。
研究関係の従業者数は106万5000人(09年3月31日現在)で、前年度比0・9%の増加となった。
職種別では、研究者が83万9000人(前年比1・4%増)、研究事務その他の関係者が8万4700人(0・4%増)、研究補助者が7万5500人(同0・7%増)、技能者が6万5800人(3・9%減)となっており、技能者の減少が目立つ結果となった。医薬品製造業に関しては、研究者が2万1700人で、前年度より4・4%増加した。
男女別では、男性が77万4600人(構成比87・0%)、女性が11万6100人(13・0%)で、圧倒的に男性が多い。ただ、女性研究者数は過去最高で、着実に増加を続けている。
研究者1人当たりの研究費は2241万円で、前年度より2・1%減少した。企業の研究者に限ると、研究費の平均は2767万円で前年度より3・2%減だったが、医薬品製造業は5964万円と製造業では最も高かった。