エーザイは、主力大型製品のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」の米国特許切れを2010年11月に控え、高用量徐放製剤の「アリセプトSR」を10年度にも投入し、中等度・重度患者をターゲットにした新規市場の開拓を目指す。10年第1四半期には、アリセプトのパッチ製剤「ドネペジル貼付剤」の米国申請を行い、特許切れの影響をカバーする。さらに今後、開発ターゲットを疾患修飾型治療に拡大し、次世代アルツハイマー型認知症治療剤を15~17年にかけて、相次いで申請する計画だ。
アリセプトの特許切れが迫るエーザイは、9月に米国で高用量徐放製剤の「アリセプトSR」を申請し、10年度にも投入できる見通しとなった。アリセプトSRは、中等度・重度患者をターゲットとした新規市場の創出による治療変革と位置づけ、市場獲得に注力する方針だ。来年7月24日までに、FDAから回答が得られる見通しにある。
帝國製薬と共同開発を進めるアリセプトのパッチ製剤「ドネペジル貼付剤」は、既に米国で「テイコクファーマUSA」が生物学的同等性試験を終え、第I相試験で7日間パッチ製剤の適切性を確認している。今後、追加で第I相試験を2試験実施した上で、10年度第1四半期に米国で申請する予定。当初、09年度中を目指していたドネペジル貼付剤の米国申請は、アリセプトの特許切れ前の投入が難しい情勢となったが、長期的な市場拡大の可能性があるとして、浸透を狙う。
さらに今後は、開発ターゲットを疾患修飾型治療に拡大し、次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発を加速させる。最も先行しているのが、γセクレターゼ修飾剤「E2212」だ。アルツハイマー型認知症の原因の一つと考えられるβアミロイド蛋白を低下させる「E2212」は、開発を進めていた「E2012」を上回る薬効、安全性を追求した第二世代のγセクレターゼ修飾剤で、10年1月から第I相単回投与試験を開始する予定。その後、第II相試験で主な認知機能改善効果を評価した上で、15年度に症状改善剤として、17年度には疾患修飾剤として申請する計画だ。
また、07年にスウェーデンのバイオアークティック・ニューロサイエンスから導入した「BAN2401」は、アミロイドβ蛋白の可溶性凝集体の一種であるプロトフィブリルを選択的に除去するヒト化モノクローナル抗体。10年第1四半期にも治験開始申請を行う予定。単回・連投試験を効率的に実施することで開発スケジュールを加速させ、15~16年度の申請を目指していく。
さらに、前臨床段階にあるβセクレターゼ阻害剤「E2609」は、アミロイド前駆体蛋白の分解酵素を阻害することで、βアミロイド蛋白の総量を低下させる新規アルツハイマー型認知症治療剤。前臨床試験では、良好な選択性と薬物動態が得られており、生体内実験でも有効性が示されている。10年度第3四半期にも治験開始申請を行い、15年度以降の申請を目指す。