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【2009年回顧と展望】新たな薬価制度の実現を‐日本製薬工業協会専務理事

2009年12月28日 (月)

日本製薬工業協会専務理事 川邊 新

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 2009年は、日本製薬団体連合会が提案した「薬価維持特例」制度が、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」という形で、10年度から試行的に実施されることとなったのが,最大のトピックだといえよう。

 わが国の薬価制度は、特許期間中の新薬であっても、薬価調査のたびに恒常的に薬価が下がるが、特許が切れ、後発品が出ても、ある程度の価格で売られていくという独特の仕組みとなっている。これは、膨大な経費がかかる新薬の研究開発費の回収が長期間にわたると共に、後発品の普及がなかなか進まない原因の一つともされている。

 早期に研究開発費が回収されないことは、わが国市場の魅力度が小さいことを意味し、外資のみならず、内資企業においても、わが国での新薬の開発・上市の意欲を削ぐことにつながり、いわゆるドラッグラグが生じる要因ともなっている。

 今回の「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」は、まさにその名の通り、イノベーションを評価し、患者、国民の待ち望んでいる新薬の開発や適応外薬への対応を促進し、ドラッグラグを解消するという画期的な仕組みといえよう。

 また、5月に、製薬協加盟会社69社全社が出資して、「一般社団法人未承認薬等開発支援センター」を設立したことも、生命関連産業としての製薬企業の社会貢献活動の一環として、評価されるものと思う。

 前述のドラッグラグの原因は、薬価制度のみならず、承認審査体制の問題、治験環境の整備の問題、ライセンスの問題など、多岐にわたっている。患者さんの望む未承認薬等を開発していくのは、製薬企業の責務ではあるが、それらの多くが、患者さんの数が少ない疾病であるとか、株式会社である個別の製薬企業においては、なかなか着手できないものも多い困難な課題であった。

 そこで製薬協としては、「未承認薬・未承認適応問題等対応プロジェクト」を09年1月に立ち上げ、未承認薬等の開発に手を挙げた企業を支援する仕組みを、製薬協全体で作り上げようという考えのもとに、その組織形態、任務、経費等の検討を進めた結果、自治医科大学の高久学長に代表理事に就任いただき、5月末にセンターの設立登記を行った。

 その後、政府も未承認薬や、新型インフルエンザワクチンの開発等を支援する基金制度を補正予算で計上し、その受け皿としてこのセンターが選定され、未承認薬開発基金として100億円、新型インフルエンザワクチン開発基金として240億円が交付されたところである。今後、交付企業の公募等が始まることとなる。

 11月には、IFPMA(国際製薬団体連合会)の会長に、内藤製薬協副会長が選出された。従来、米国、欧州から選出されていた会長に、初めて日本から就任したことは、わが国の製薬産業が真にグローバル化していることの象徴的な出来事といえよう。

 09年は薬価調査の年でもあった。12月の中医協で発表された速報値では、乖離幅8・4%と近年にない大きい数値であった。これは、流改懇の緊急提言に沿って、未妥結・仮納入および総価取引の是正に努めた結果、一定の前進を見たが、様々な皺寄せが、価格の低落につながってしまったものと思われる。いずれにしろ、各社それぞれに大きな影響が予想される。

 09年のこのような動きから、10年は、まずは「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」制度が、その狙い通り、新薬や適応外薬等の開発に結びついていくことを、業界として示していくことが重要になるものと思われる。また、この制度の導入が、流改懇の緊急提言に沿った流通改善にもつながっていくことについても、業界の努力が求められるであろう。

 また、新政権が温暖効果ガスの排出の大幅な改善等、環境重視の方針を打ち出していることにも、注目していく必要がある。製薬業界は他産業と比し、排出量が多いわけではないが、どのような政策が出されていくのかによって、大きな影響を受ける可能性がある。

 また、米国の医療保険制度の改革、途上国の医薬品アクセスと知財問題等、国際的な動向にも的確に対応していく必要がある。

 10年は、厳しい経営環境の中で、新しい薬価制度のスタートを迎え、製薬産業はある意味で、大きな転機を迎えることになる重要な年になるのかもしれない。

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