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【2009年回顧と展望】“流通改革”第2ラウンド、新体制下でも引き続き推進‐日本医薬品卸業連合会専務理事

2009年12月29日 (火)

日本医薬品卸業連合会専務理事 羽入 直方

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 今年は、“チェンジ”をスローガンに掲げたオバマ新米国大統領の就任演説から始まった。日本でも閉塞感を打破し、政権交代を訴える民主党が、夏の衆議院議員選挙で大勝し、鳩山内閣が誕生した。

 医薬品卸業界では、日本医薬品卸業連合会会長として、4期8年にわたり活躍された松谷前会長から、別所新会長へバトンが引き継がれた。米国や日本の、国政レベルの基本方向を変えるための“チェンジ・交代”と異なり、医薬品卸業界が掲げてきた、流通改革の基本方針を堅持し、医薬品流通の現状をチェンジするための活動を継承し、強化する交代であった。

 来年は、薬価改定・診療報酬改定の年である。中央社会保険医療協議会では、医療崩壊は累次の診療報酬マイナス改定の帰結である、とする診療側がプラス改定を強く要求し、厚生労働省も10年ぶりの、ネットプラス改定を目指す見解を公表し、予算編成の焦点となった。

 診療報酬改定財源に充当され得る薬価差、すなわち、平均乖離率は薬価調査の結果、8・4%であった。前回の6・9%、前々回の8・0%を超える水準となった。卸のシェア競争、大手卸合併発表劇の影響、メーカーのスポット的な販売拡張政策等による、市場実勢価格の著しい低下が乖離率の拡大となり、皮肉にもメーカーが提案した、薬価維持特例を財源面から後押しすることになった。

 その薬価維持特例は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算と名称を改めて、試行的導入案が固まった。新制度案の実現により、新薬開発が促進し、医薬品市場が充実することを期待したい。

 しかし、新制度案は、価値に見合った市場価格が形成されなければ、薬価改定の判定基準となる「平均乖離率」は正しく算出できず、本来の制度目的を果たすことはできない。まさに、新制度案は流通改革と密接不可分の関係にある。流通改革の実現は、医療保険制度関係者が一致して目指すべき目的である。

薬価改定後の交渉がポイント

 流通改革については、初年度の取り組み結果が、5月の「医薬品の流通改善に関する懇談会」で総括された。課題とされた未妥結仮納入の解消と、総価取引の是正は、一定の成果が見られたが、川上取引の合理化(一次売差マイナスの是正)は不十分な結果となった。

 3月末の卸企業の営業利益率が、史上最悪の数値であった原因は、前述の理由以外に、流通改革の対応に起因する側面が大きい。価格妥結を急いだために、購入者側のバイイングパワーに押し切られたこと、アローアンス縮小分の一次仕切価引き下げへの振り替えが不十分なために、仕入れ最終原価が上昇したことなどである。

 新年度になって、薬卸連の体制も一新したが、卸業界は流通改革の貫徹を目指し、継続的な取り組みを推進している。来春の薬価改定後の川上交渉を、緊急提言に合致したものとすることが、当面のポイントとなる。

 卸業界の一層の努力と共に、流通改善懇談会の継続的開催、行政当局の適切な指導・関与、流通関係者の共通認識の深化が求められる。

 また、流通問題の構造的な解決のためには、流通改善懇談会の席上で有識者委員から指摘があったように、交渉を長引かせるよりも、早期に妥結した方が有利な仕組みの導入が必要であり、今後の課題である。

新型インフル対策には全力

 6月に、WHOがパンデミック宣言をした新型インフルエンザは、日本では秋以降感染が拡大し、年末になっても収束に至っていない。当初想定された強毒型ではなく、弱毒型であるのがせめてもの救いである。

 治療薬や国産ワクチンの供給不足、輸入ワクチンの商品性等から、流通を担う卸の役割に行政の期待が大きい。ワクチンについては、配給制度の復活を思わせる流通スキームも組まれている。危機管理流通の一場面という様相を呈しており、医薬品卸の社会的使命を果たす場面であり、各社とも全力を尽くす姿勢である。

 改正薬事法が6月に施行され、大衆薬の販売形態が大きく変わった。リスクに応じた医薬品分類で、新たな販売資格者制度の活用により取り扱われることになった。懸念された制度改正に伴う表示未変更品の大量返品は、関係者の努力で避けられた。

 今後は、新制度の定着、スイッチOTCの増加等を通じ、大衆薬市場の拡大、セルフメディケーションの一層の普及が望まれる。大衆薬卸の小売業に対するリテールサポートの充実に期待が集まっている。

アジアの中の日本を意識

 9月には、一昨年に続いて日韓医薬品卸のフォーラムが東京で開かれた。韓国は、日本の医療保険制度をモデルに国民皆保険が達成され、医薬品市場の拡大・充実が著しい。

 しかし、10年前に保険財政の安定を期して、医薬品の実取引価請求制度を採用したことから、違法な薬価差益が高水準で発生し、行政課題となっている。その解決策を、日本の医薬品流通の中に見出したいとして、政府関係者等の調査団の来訪も頻繁であった。わが国の医薬品流通の歩みを見る思いである。

 一方、広域卸の中国進出が出揃った。アジアの中の日本の位置を意識する場面が、医薬品流通の分野にも広がっている。国内産業の典型であった医薬品卸も、海外雄飛の時期を迎え、日本が誇る医薬品卸のMSを核とするビジネスモデルが試されることになる。



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