新サービス提供し差別化‐ネット上で治験薬を割付
EPSグループのイートライアルは、自社開発の「EDMSオンライン」、米メディデータの「Medidata Rave」を軸に、EDCサービスを展開しているが、新たに「Medidata Rave」ユーザーに対して、インターネット上での治験薬割付システム(IWRS)をセットで提供するサービスを開始した。同社は、運送会社と提携した治験薬割付・配送サービスの提供に向けた準備を進めているが、新たに「Medidata Rave」+IWRSを実現することで、高付加価値のEDCサービスをさらに充実させたい考えだ。
癌領域中心に実績伸ばす‐EDCの導入が不可欠に
イートライアルが自社開発したEDMSオンラインは、国産EDCとして、癌領域の臨床研究を中心に実績を伸ばしている。治験を含めた実績は100プロトコールにまで拡大し、そのうち臨床研究が約7割を占める。
現在、国立がんセンター、西日本胸部腫瘍臨床研究機構(WJTOG)、神戸臨床研究情報センター(TRI)など、癌領域中心に採用されているが、河野覚社長は「今まであまり実績の多くない循環器領域を含めて、治験や製造販売後調査でも、まだまだ拡張の余地はある」と話す。
一方、米メディデータと提携し、世界標準EDCサービスの提供を開始した「Medidata Rave」は、10試験程度の実績が積み重なってきた。
今のところ「Medidata Rave」の採用は、大手製薬会社が中心だが、河野氏は「製薬メーカーもEDCに積極的な姿勢を示し始めた。これまで消極的だったメーカーも、導入しないわけにはいかないという雰囲気になってきている」と、手応えを語る。さらに、EPSグループのCRO業務とワンストップで利用できる強みを生かし、顧客ニーズに合わせてEDMSオンラインと「Medidata Rave」のEDCサービスを提供していく方針だ。
その一つとして、新たに「Medidata Rave」ユーザーにWebを用いた治験薬登録・割付システム(IWRS)の提供を開始した。IWRSは、欧米で治験薬の割付に多く用いられていたIVRS(音声自動応答システム)に対し、電話回線の代わりにインターネット上で割付を行うというシステム。
これまで、治験薬の登録・割付をWeb上で行おうとすると、EDCとは別の登録・割付システムに、改めてログインする必要があったが、新たなIWRSは「Medidata Rave」を使うだけで、自動的にWeb上で登録・割付も行えるという新サービスだ。既に1試験で順調に運用を進めているという。
もともと、自社開発のEDMSオンラインには、標準機能としてIWRSが装備されていた。このEDMSオンラインのIWRS機能を「Me‐didata Rave」に連携させることで、「Medidata Rave」+IWRSを実現。「Medidata Ra‐ve」の画面を操作するだけで、自動的に割付されることから、ユーザーはEDMSオンラインを意識せずに使えるメリットがある。実際には、「Medidata Rave」の裏側でEDMSオンラインが機能しているという仕組みだ。
河野氏は「これまで『Medidata Rave』にはIWRSの機能が備わっていなかった。実際にユーザーから問い合わせもあったが、IWRSとの連携システムができたので、新たな付加価値としてアピールしていきたい」と話している。
治験薬配送システムも順調‐自動搬入指示で在庫管理も
また昨年、EDMSオンラインをベースにした新サービスとして、治験薬割付・配送システムを開始した。既に5試験が稼働中だが、これは2008年4月のGCP改正を受け、第三者を介した治験薬の交付が認められたことに着目した付加価値サービスの一つ。
Web画面で割付を実行し、治験薬の搬入・回収依頼を登録すると、その指示を受けた第三者の運送会社が搬入・回収に対応するため、モニターが医療機関に出向く必要がないという新サービスだ。また、各施設における治験薬使用状況(割付状況)に応じて、システムが搬入すべき数量を算出、自動的に搬入指示を出す仕組みも可能であり、基本的にモニターは施設の在庫状況を気にする必要がなくなる。
今後は、協力体制の構築を進めている物流会社と連携し、そのロジスティックシステムとEDMSオンラインを連動させることで、治験薬の在庫管理へとサービスを拡大していく予定だ。河野氏は、「治験薬の配送や在庫管理は、これまで製薬メーカーがアウトソーシングしづらかった部分だけに、好意的に受け止められる可能性がある」と話している。
こうした新たな付加価値サービスによって、「Medidata Rave」ユーザーに対しては、IWRSに治験薬在庫管理を付加したサービスの連携、EDMSオンラインのユーザーには、既存のEDCシステムと治験薬在庫管理を連携したサービスが実現することになる。
さらに、IWRSシステムのみを使うことも可能で、様々なニーズに対し、より柔軟な対応をアピールしていく。
電子患者日誌にも期待
また、昨年4月に米インビボデータと提携したイートライアルは、日本代理店として、携帯型電子患者日誌(ePRO)の受託サービス開始に向けた準備を進めている。
欧米では、米FDAが被験者の安全確保の観点からePROの使用を推奨しており、日本でも医薬品医療機器総合機構(PMDA)はePROを使用した申請データを受け入れていることから、同社は今後ePROのニーズが増加し、一気に普及する可能性があると見ている。
河野氏は「当面はIWRSとePROに力を入れ、今後も付加価値サービスで差別化を図っていきたい」と話している。
イートライアル
http://www.e-trial.co.jp/