業界の信頼回復に重い課題
わが国製薬団体のトップ組織、日本製薬団体連合会は19日に開いた評議員会で、任期満了に伴う役員改選を行い、新会長に庄田隆氏(第一三共社長)を選出した。また、日本製薬工業協会も同日の総会で役員改選を行い、新会長に長谷川閑史氏(武田薬品社長)を選出した。任期はいずれも2年。庄田氏は、製薬協会長から横滑りで日薬連会長に就任した。4月から新薬価制度の試行導入があった一方、足元では薬事法違反事例が発生し、業界環境は厳しい局面を迎えている。両新会長には、2012年度の新薬価制度の恒久化に加え、法令遵守の徹底、企業倫理の向上など、業界の信頼獲得という難しい舵取りが待ち構える。
日薬連の新会長に選出された庄田氏は、試行導入が決まった新薬価制度に言及。「次回改定で本格実施を目指す中には、医療上不可欠な基礎医薬品の加算という問題が積み残されている」と課題を挙げた上で、「恒久化に向けて努力していきたい」と抱負を語った。
日薬連は、14の業態別団体、19の地域別団体と多くの傘下団体を抱える。庄田氏は「各団体の課題に関して、その団体ごとに提言を行うか、日薬連として訴えていく方がよいのかは、課題ごとに違う」と指摘。会長として、各団体で異なる利害調整を積極的に進める姿勢を示した上で、「日薬連として取り組む課題をしっかりと見極めていきたい」と語った。
また、竹中登一前会長は退任に当たって、「最も印象に残っているのは薬価制度改革が前進したこと。ただ、最後に薬事法違反が発生したことは残念」と任期を振り返った上で、「新薬創出加算というポジティブな要素が、ネガティブな事件に引っ張られてはいけない。業界が信頼を得て、加算の試行導入を大切にしてもらいたい」と語った。
一方、製薬協の新会長に選出された長谷川氏は、総会で「業界を取り巻く環境は厳しい状況にあるが、微力ながら全力を尽くしたい」と語った。
12年度の新薬価制度の恒久化に向け、業界は製薬協会長に国内トップである武田の長谷川氏、日薬連会長に製薬協会長を経験した庄田氏という布陣で臨むことになる。併せて薬事法違反に向かう社会の逆風に対し、どう信頼を回復していくか、その手腕が問われることになる。
なお、製薬協の副会長には、現職4氏に加え、手代木功氏(塩野義製薬社長)が新たに選出された。