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2006年10大ニュース”新時代への基盤固めた1年

2006年12月26日 (火)

 2006年の薬業界を表現する言葉としては、「制度改革に明け暮れた1年」がピッタリではないだろうか。少子・超高齢社会の到来、メタボリックシンドロームに代表される生活習慣病の増加、国民の価値観・ニーズの多様化など、社会経済が大きく様変わりしつつある中で、新しい時代に即応するための基盤固めが進められたものと言える。[1]薬事法の改正により、一般用医薬品販売の仕組みが46年ぶりに抜本的に見直された[2]適切な医療提供体制、医療保険制度を将来にわたって堅持するための医療制度改革関連法が成立した[3]薬学教育6年制がスタートした――などは、それを如実に表した出来事であろう。一方で、「共立薬科大学と慶應義塾大学の統合に向けた協議開始」「国策による医薬産業の振興」「後発医薬品の使用促進」といった動きは、今後の新たな展開を予感させる。


■改正薬事法を公布

 一般薬販売に新たな仕組み”違法ドラッグの規制も盛る

改正薬事法が全会一致で成立
改正薬事法が全会一致で成立

 一般用医薬品の販売制度見直しと、違法ドラッグ対策を柱とした改正薬事法が6月14日に公布された。改正法案は今年4月、参議院に上程され、参考人の意見陳述を含め、3回の審議を行った後に可決。衆院では6月から審議入り、同月8日の本会議で、全会一致により可決、成立した。

 主な改正点は二つ。一つは一般薬の適切な選択や使用を促すため、医薬品販売の仕組みを抜本的に見直し、販売に関する各種規定の整備を図った。もう一つは、薬物乱用の入り口となっている違法ドラッグを規定するもので、その製造、輸入、販売等を禁止することが盛り込まれた。

 特に、現行薬事法が制定された1960年以来、一度の改正も行われてこなかった一般薬の販売制度については、[1]販売形態を「薬局」「店舗販売業」「配置販売業」の3業態に整理する[2]一般薬を副作用の強さなどリスクに応じて、第1種から第3種まで三つのカテゴリーに分類すると共に、各区分ごとに表示、陳列、販売、情報提供のあり方を定める[3]医薬品販売に従事する薬剤師以外の専門家として、「登録販売者」を新たに設け、一般薬の販売には薬剤師または登録販売者の配置を義務づける――こととなった。さらに、新制度へ円滑に移行できるように経過措置も設けられた。

 リスク分類については、11月30日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会で審議が行われた。その結果、当初11成分だった第1類薬は、新たに指定医薬品となった10成分を追加したのに加え、第2類薬からテオフィリンを移動させるなどにより全部で22成分となった。また登録販売者の試験についても、近く検討が始まると見られる。

■医療改革法が成立

 薬局も医療提供施設に

医療改革法案の強行採決に、野党が激しく抗議
医療改革法案の強行採決に、野党が激しく抗議

 医療の新時代を開く医療改革関連法が6月14日、与野党が対決姿勢を崩さないまま、与党の賛成多数で可決、成立した。関連法は健康保険法や医療法の改正が柱。少子高齢社会に対応できる持続可能な制度とするため、医療費適正化、新しい高齢者医療制度の創設、保険者の統合・再編を図る一方で、良質な医療を提供するため、患者への情報提供推進、医療機関の分化・連携の促進などが盛り込まれた。

 改正医療法では、「調剤を実施する薬局」が医療提供施設として位置づけられた。これまで医薬品の安定的供給、医薬品適正使用への取り組みを中心に、地域医療に大きく貢献してきた実績が評価された結果といえる。

 また、医療機関や薬局に対し、一定範囲の情報を都道府県に届けることが義務化され、都道府県はその情報をインターネット等を通じ、分かりやすく住民に提供していくことになった。

 さらに癌、小児医療、産科医療、在宅医療、救急医療など9事業について、診療所・病院、薬局などが連携して取り組む「地域医療連携体制」の構築も進められる。この体制の中で、薬局がどのような役割を果たすのかが課題だ。

 一方、改正健保法では医療費適正化の推進が大きい。12年度に向けた介護療養型医療施設の廃止・介護施設への転換が議論を呼んでいる。

 75歳以上を対象にした「後期高齢者医療制度」も、08年度のスタートに向けて準備が進められている。

■薬学6年制がスタート

 実を結んだ関係者の悲願

 薬剤師ら薬業関係者にとって長年の悲願であった「薬学教育6年制」が4月からスタートした。6年制による薬学教育の充実・活性化は、質の高い薬剤師養成、さらには医療の質向上にもつながるという考えの下、単なる現行4年制教育の延長ではなく、新しい薬学教育の創造を目指すという観点から、大きな期待が寄せられている。

 6年制実施の背景には、科学技術等の発達により、切れ味の鋭い医薬品が医療用を中心に開発されてくる一方で、これら医薬品の使用に当たっては、安全性に一層配慮しなければならないという状況がある。これからの薬剤師は調剤を含め、医療により深く参加・関与していく必要性が指摘されている。

 医療・臨床に強い薬剤師を養成する観点から、6年制課程では6カ月間の長期実務実習が必修となった。1カ月間の事前教育、2・5カ月ずつの薬局実習と病院実習が5年次以降に行われる。実務実習への取り組み体制整備が、薬学6年制の成否を左右すると考えられている。

 長期実務実習の体制整備を中心に、共用試験のあり方も含め、残された課題の解決に向けて、関係者による精力的な議論が重ねられている。

■GE使用へ基盤整備

 処方せん様式の変更も

 ジェネリック(GE)医薬品を使用するための基盤整備が進んだ1年であった。3月にはGE薬の全規格収載に対応するため、GEメーカーの活動が本格化してきた。4月には処方せん様式が変更され、医師の指示さえあれば薬局でGE薬への変更が可能となった。その一方で品質・同等性に関する議論は続いており、今後の検討課題と言えそうだ。

 厚生労働省が3月に発出したGE薬の全規格収載に関する通知によって、GE薬メーカーは、新規収載品目については08年の追補収載時から、既収載品目は11年の追補収載時点で、全規格を取り揃えることになった。一口に全規格収載と言っても、規格数は多く期間も限られている。そこで東和薬品、沢井製薬、日医工の3社はGE薬の共同開発などを行い、不足する規格を揃える方針だ。また大洋薬品工業は、単独で製品の開発、生産を行うことを明らかにしている。

 GE薬使用促進の一環として、診療報酬改定に伴い処方せん様式も変更された。新様式の処方せんには「後発医薬品への変更可」欄が設けられ、ここに医師が署名または捺印し、患者が望めばGE薬を選択できる仕組みになった。

 このように、GE薬の使用促進策が進められているが、先発品との同等性に関する議論は依然として続いている。先発品と有効成分は同じでも、処方や製法が異なるため、安定性や吸収性に差があるとの意見も多く出されている。今後、GEメーカーには、品質面などの適切な情報提供が求められよう。

■共立薬大と慶大が合併へ

 薬科大学にも再編成の波

合併の成功を期す両大学首脳
合併の成功を期す両大学首脳

 慶應義塾大学(塾長安西祐一郎氏)と共立薬科大学(理事長橋本嘉幸氏)は11月20日、2008年4月をメドに合併する方向で、協議に入ることに合意した。「両法人合併推進会議」を立ち上げ、学生の受益を最優先に、共立薬大という名前を残すかどうかも含め、具体的な検討を進めていく。

 今回の経緯は、共立薬大が従来より高い水準で、医療及び薬学の教育研究に取り組みたいという考えの下で、慶大に合併の申し入れを行ったもの。慶大は、両法人の合併が、慶大にとっても質的な充実・発展につながると判断し、評議員会において、▽法人の合併を前提として協議に入る▽合併協定書を締結した場合には、08年4月1日をメドとして慶大に薬学部と大学院薬学研究科を設置する――方針を決定した。

 共立薬大側は慶大との合併に関して、附属病院を持たない共立薬大のような単科薬大は、実務実習を外部の病院に頼らざるを得ない現状を指摘した上で、「慶大には医学部や附属病院、薬剤部があり、合併が成立すれば実務実習でも絶大な力を発揮する」と述べ、この点が合併を希望した最大の理由だと説明した。

 単科薬大と総合大学の合併という構図は、薬学6年制に伴う長期実務実習の実施、少子化による入学生の減少などに対し、薬大が生き残りを模索した結果と言える。共立薬大の悩みは他の単科薬大にも共通し、総合大学も薬学部を“売り物”とできるだけに、今後、再編の動きが広がる可能性もある。

■FAPA、26年ぶり日本開催

 21世紀の薬剤師職能を模索

アジアの薬剤師が一堂に会し、新たな役割が討議された
アジアの薬剤師が一堂に会し、新たな役割が討議された

 第21回アジア薬剤師会連合学術大会(FAPA横浜大会)が「医療における薬剤師の新たな役割」をメインテーマに、11月18021の4日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催された。日本での開催は1980年の京都大会以来、26年ぶり3回目。アジアを中心とする17カ国・地域から、約1450人の薬剤師・薬学者などが参加した。

 大会では、▽薬剤師教育の現状と課題▽セルフメディケーションと薬剤師▽新しい薬剤師の職能を目指して――という三つのシンポジウムが企画されたほか、口頭発表61題(うち日本から22題)、ポスター発表241題(90題)が行われた。アジア諸国の医薬分業、OTC事情、薬学教育などの現状・課題が報告され、21世紀の薬剤師職能展開に向けて大きな成果が得られた。

 今大会初の試みとなった禁煙をテーマとしたラウンドテーブルフォーラムや、未来の薬業界を担う学生が一堂に会する薬学生部会も企画された。

 このほか、FAPA恒例のフィールドトリップ(施設見学)では、300人を超える海外からの参加者が、日本の病院、製薬工場、薬科大学、薬局などの現場を視察した。

 最終日の理事会では、新FAPA会長に韓国のナム氏が就任した。次回は2年後にシンガポールで開催される予定だ。

■診療報酬マイナス改定

 調剤は将来見据えた内容に

 今年4月の診療報酬改定は、マイナス3・16%と過去最大の引き下げとなった。「患者本位の医療提供の仕組み構築」を基本に、分かりやすい体系の構築や小児科・産婦人科への重点化などが行われた。調剤報酬は0・6%の引き下げであったが、薬剤師の役割に応じた体系を目指した、将来につながる改定となった。また、新たに明細の分かる領収証の発行も義務づけられた。

 今年度の改定は、▽患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療の実現▽質の高い医療を効率的に提供するため、医療機能の分化・連携を推進▽今後、重点的に対応していくべき領域の評価▽効率化の余地があると思われる領域の評価のあり方――という四つの視点から見直しが行われた。

 調剤報酬では調剤基本料、調剤料、薬剤情報提供料・薬歴管理指導料、品質情報提供料が見直された。3区分あった調剤基本料は「原則一本化」したが、処方せん枚数や集中率が高い薬局については、特例的に低い点数が設定され、次回改定の課題として残った。調剤料は、浸煎薬や湯薬の評価を引き上げる一方、長期投薬の内服薬評価が引き下げられた。

 従来の指導管理料は、分かりやすさの観点から「薬学管理料」と改称され、薬剤情報提供料の見直し、薬剤服用歴管理料、後発医薬品情報提供料などの名称変更や要件の見直しが行われた。

 一方、医科診療報酬では、慢性期入院医療の包括化の導入や、小児・産科・在宅医療などが重点的に評価された。また、後発医薬品使用促進のため処方せん様式の変更も実施された。

■日本調剤が薬剤師会を退会

 迫られる組織・運営の見直し

 日本調剤が薬剤師会を脱会するそうだが――こういう情報が6月下旬、本紙にもたらされた。本紙が取材したところ、同社は7月をメドに退会すべく、既に今春から手続きを進めていたことが明らかになった。

 取材に応じた薬剤本部長の三成亮氏らは退会の理由を、「各種保険や年金、教育研修・情報収集など、会社や日本保険薬局協会と薬剤師会の行っている事業が重複しており、その状況や経費を見直した結果」と説明した。日調は約200店舗の管理薬剤師等を薬剤師会から退会させる等により、9000万円近い経費を削減した模様だ。

 日調の対応によって、薬剤師が自らの職能を維持・向上させるために、本来自分の意志で入会する薬剤師会の会費を、会社が肩代わりしている状況の一端が明らかになった。また、薬剤師会の側は組織率の低さという問題を抱えており、日調の退会が会の運営に直接影響する恐れもあるため、地域薬剤師会にも動揺が走った。

 FAX分業の費用という問題もあったが、日調の退会が薬剤師会のあり方に一石が投じたことは確か。組織・運営面の改革へどう取り組んでいくのか、薬剤師会は重い課題を突きつけられた。

■日薬が基準薬局の要件見直しへ

 医療提供施設の理念入れ

 日本薬剤師会は改正医療法、改正薬事法の公布などを受けて、基準薬局の認定基準見直し作業を進めている。基準薬局制度を「地域住民に選ばれる薬局の自主基準」と位置づけた上で、新たに基準薬局の理念を設定し、よりシンプルな体系を目指す。各県薬からの意見を取りまとめ、来年4月1日から新要綱を実施する見込みだ。認定基準は従来39項目あったが、認定のハードルが低く、現状にそぐわないとの声が上がっていた。

 新設される基準薬局の理念は、▽調剤、医薬品の供給その他薬事衛生等を通じて、国民に対し良質かつ適切なサービスを提供する医療提供施設▽全ての医薬品の供給拠点としての責任を果たし、地域の保健・医療・福祉に貢献する薬局▽薬局の模範となるもの――と定められる。

 改正案では「責任を持って処方せんを調剤している」「医療提供施設として、適切な体制を整備している」「一般用医薬品等を販売し、その販売方法が適切である」「地域の保健・医療・福祉に貢献している」「十分な知識・経験のある薬剤師が勤務している」「その他」の6項目に分類した上で、それぞれ“遵守事項”が規定される。

■医薬産業の振興、国策に位置づけ

 政府が、経済成長重視路線への本格的な切り替えを進める中で、医薬産業が経済成長の旗手に位置づけられた。厚生労働省だけでなく、国全体による後押しが期待できる立場となった。業界には「1丁目1番地の地位」と表現する人もいる。

 政府方針は「経済成長戦略大綱」に描かれている。「科学技術によるイノベーションを生み出す仕組みの強化」「医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化」が盛られた。手薄な臨床研究、治験の実施環境、承認審査の充実などが謳われ、関係省庁が動き始めた。

 業界が求め続けてきた「官民対話の場」も盛られた。財政や規制面に偏る施策に産業振興も加味し、必要な取り組みについて政府と産業が話し合うもので、実現が模索されている。

 また政府は、経済成長の源泉とするイノベーション(技術革新)を促すため、長期戦略指針「イノベーション25」の策定も決定。工学、ITと並んで「医薬」が重点分野に掲げられ、来年6月までに「分野別戦略的ロードマップ」がまとめられる。

 医薬産業に光が当てられたのは、国際競争が激しい分野なのに加え、生産性が高く、経済成長・国民福祉の向上に資するとの期待があるからだ。イノベーションがキーワードになったことで、有用性の高い新薬を創出できるかが企業生き残りの条件になり、より厳しい環境に置かれたとの指摘もある。



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