厚生労働省医薬食品局審査管理課は4日付で、「抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドライン(GL)」を都道府県関係部局に通知した。GLは、治療方法が限られる進行癌患者の治療を目的とした抗癌剤を開発する際、必要な非臨床試験の種類や試験の実施時期などを示している。患者を副作用から守るため、必要な非臨床試験デザインを示す一方で、動物やその他の資源の不必要な使用を避けるため、簡略化できる非臨床試験なども記載している。GLは、通知日以降の承認申請に適用される。
GLは、昨年11月に米国セントルイスで開かれたICHで、ステップ4(ICH調和GL最終合意)に到達した「抗悪性腫瘍薬の非臨床評価(S9)」を翻訳したもの。
抗癌剤の開発は、病態が進行性で、致死的な悪性腫瘍患者が臨床試験に参加することが多く、臨床投与量が副作用発現と近いことも希ではないため、非臨床試験のデザインに柔軟性を持たせた。
GLは、投与経路にかかわらず、低分子医薬品およびバイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)に適用。健康被験者を対象とした臨床試験、悪性腫瘍の予防、患者の随伴症状の緩和、化学療法に伴う副作用の治療を目的とした医薬品、ワクチン、細胞治療などには適用されない。
妊娠に対し、抗癌剤の潜在的なリスクの情報を提供するために行う「生殖発生毒性試験」の指針では、抗癌剤の胚・胎児発生に関する試験について、「製造販売承認申請までには実施すべきだが、進行癌患者の治療を目的として臨床試験を実施するためには必須ではない」と明記。遺伝毒性試験についても、「必須ではないが、製造販売承認申請までには実施すべき」など、効率化が可能な点を示している。
また、代謝物の評価についても、「進行癌患者の治療を目的に開発される抗癌剤では、個別に安全性評価を行う必要はない」としている。
小児を対象とした抗癌剤の開発に必要な非臨床試験では、「当該医薬品の対象として小児を組み入れるために幼若動物を用いた試験を追加する必要はない」など、3R(使用動物の削減・動物の苦痛軽減・代替法の利用)の原則に従い、不必要な動物実験を回避する方針を示している。