丸石製薬の井上慶一社長は、大阪市内で開いた記者会見で中期ビジョンを発表し、2010年3月期は約394億円だった売上高を、中期的に500億円へと引き上げたい考えを表明した。強みとする麻酔領域に加え、術前・術中・術後の周術期全般に得意領域を広げ、安定的な成長を狙う。無理をしないように、達成時期は明記していない。
中期ビジョンでは、主力の全身吸入麻酔剤「セボフレン」によって成長を遂げ、麻酔領域で信頼を得てきた実績をもとに、今後の成長に向けて、周術期領域へと視野を広げることを打ち出した。売上高が20~30億円と小さい製品にも目を向け、製品群を総合的に充実させることで、周術期領域での存在意義を高める方針だ。
今年4月に社内で発表した中期ビジョンでは、「マーケットフルカバレッジ(MFC)戦略」を掲げた。現在、どのような製品群が必要なのか、市場調査を実施しており、MRにも臨床現場のニーズを深く把握するよう指示を出した。
発売後約25年の速乾性擦式手指消毒剤「ウエルパス」と約20年のセボフレンが、今でも医療機関に強く支持されている実績から、「特許期間を過ぎても、いいものであれば長期間売れる」と井上氏。本当に医療機関に必要とされる製品を見つけ出し、提供してきいたいとしている。
この考えに合致する製品であれば、積極的に導入も進める。その一つが、ラクオリア創薬が開発し、第I相臨床開発段階にあるEP4拮抗剤。術後疼痛や癌性疼痛を治療する注射剤として製品化を目指す共同合意書を締結したのも、こうした戦略の一環で、周術期領域も視野に、必要とされる製品開発を進めることにしている。