米国の安全性試験受託機関「WILリサーチ」は、日本でサイエンスとサービスを融合させた新たなビジネスモデルを打ち出し、国内の非臨床CRO市場シェアの拡大に動き出す。マーク・ネメック社長兼COOは、「これまでとは違い、新しい完全な融合サービスを日本市場に浸透させたい」と意欲を示している。WILリサーチは、1984年から非臨床試験の受託業務で日本市場に参入。国内活動は長い歴史があるが、新ビジネスモデルでさらなる売上の底上げを目指す。
WILリサーチは、米オハイオ州を拠点に活動するグローバルCRO。設立は1976年と長い歴史を持ち、北米でトップ4、グローバルでトップ10入りする規模を誇る。米国とオランダの関連会社を傘下に置き、一般毒性試験、安全性薬理試験、生殖発生毒性試験など、医薬品・化学品・農薬の非臨床試験を受託している。
特に、生殖発生毒性試験に強いのが特徴で、既に2009年は87試験、10年は40試験を受託。設立以来の実績としては、1750試験と豊富な経験が裏付けられている。また、生殖発生毒性試験は、ヒトにおける妊娠、分娩、胎児の発育過程、男性機能の影響を、動物で調べる重要な試験となることから、高度な分析が実施できる科学者7人を配置。技術・スタッフ面で世界でもトップクラスの布陣を敷いている。
生殖発生毒性試験の特徴を前面に打ち出すWILリサーチは、新薬開発の成功確率の低下を受け、非臨床CROを取り巻く環境が厳しさを増す中、20年以上にわたって約18~20%の二桁成長を示すなど、好調に推移している。
ネメック氏は「アウトソーシングの傾向には波が見られるが、一貫して言えるのは、(製薬企業側の)強い需要があるということだ」とし、「これまでCROは、非臨床試験を受託するだけだったが、最近は医薬品の基礎研究に関して、われわれのシニアサイエンティストの支援が必要とされてきている」と非臨床CROの役割変化を指摘する。
その背景として、大手製薬企業が複数の新薬を開発するために、莫大な費用を必要とするにもかかわらず、新薬創出の効率性は低いことが挙げられる。ネメック氏は「製薬企業が自社で手がけるのではなく、外部リソースとしてCROをラボとして活用するというように、ほとんどの製薬企業がCRO依存型になっていくだろう」との見通しを示す。
既にWILリサーチは、84年から日本で非臨床試験の受託業務を行い、グローバル売上高の3~5%を日本市場が占めている現状にある。こうした中、業界の劇的な環境変化を受け、新たに日本でサイエンスとサービスを融合させたビジネスモデルを打ち出した。関連5会社を統括し、顧客である製薬企業に対し、新ビジネスモデルを提供することで、さらに日本市場にWILリサーチのサービスを浸透させたい考えだ。
ネメック氏は「融合サービスによって、日本の売上高比率を高めるのはもちろんだが、専門性の高い科学的な業務、品質の高さで強みを発揮していきたい」と述べ、日本市場戦略を強化していく考えを強調した。