文部科学省の科学技術政策研究所は、「大学等におけるベンチャーの設立状況と産学連携・ベンチャー活動に関する調査」結果をまとめた。それによると、大学発ベンチャーの新規設立件数が減少する中、株式公開、売却、清算などによって、既存ベンチャーの発展や整理が進んでいることが明らかになった。大学発ベンチャーに関与する研究者は、産学連携やライセンシング意識が強く、特許取得や、特許出願が新たな共同研究へ発展した経験が比較的多いことも分かった。
調査は、国内の大学、高専、大学共同利用機関、独立行政法人研究所、国立試験研究機関の2008年度末時点の国内におけるベンチャー活動を分析した。
大学(高専、共同利用機関を含む)発ベンチャーの設立累計は1963社で、単年度の設立数は04年度と05年度の252社をピークに減少し、08年度は90社となった。分野別ではライフサイエンスと情報通信の上位2領域で過半を占めるが、近年はいずれも設立数が減っている。 大学発ベンチャーの設立後の変化を見ると、株式公開が20社、売却が37社、精算・休眠が109社だった。株式公開は、新設件数が減り始めた06年度以降も毎年数件出ているが、精算・休眠は毎年20件近くという高水準で推移している。
また、多くの大学が組織的に産学連携や知財活動を展開しているものの、ベンチャー創出や成長支援に対する組織的取り組みは少なかった。
こうした状況を政策研は、「大学発ベンチャーの課題は、『起業数の増加』から『設立されたベンチャーの発展や整理』といった、設立後のマネジメントに移行してきた」と分析している。
さらに、産学連携や大学発ベンチャーに関与する研究者の特徴を調べたところ、産学連携に積極的な研究者の中でも、特にベンチャーに関与する研究者が、主体的に産学連携に取り組んでおり、外部資金獲得能力も高いことが浮き彫りになった。ベンチャーに関与する研究者は、産学連携関連の公的資金を活用し、事業化やベンチャー創出に至る場合も多く、産学連携の効果を強く感じているという。
企業との共同研究を通じて新たな特許出願につながった経験や、自身の特許出願情報から、新たな共同研究へつながった経験も、ベンチャーに関与しないグループに比べて豊富で、特許権のライセンシング経験がある場合が多かった。ライセンシング経験者の3割が、大学等発ベンチャーを最も主要なライセンシング相手先に挙げている。
政策研は、「研究者はベンチャーに関与することによって、一般的な企業連携を通じ、獲得する以上の効果を得る可能性がある」との考察も加えている。