一般用医薬品セルフメディケーション振興財団(佐藤誠一理事長)は、2010年度助成者の授与式を兼ねて、「第5回一般用医薬品セルフメディケーションシンポジウム」を都内で開催した。財団は06年に設立され、一般用医薬品の適正使用や情報提供等の調査研究に対する助成を行っている。今年度は3~4月にかけて公募したところ、63件の応募があり、選考の結果、18件の助成対象者を決定した。当日は薬系大学・行政・薬業界関係者多数を迎え、助成対象者の発表と講演、パネルディスカッションが行われた。
あいさつした佐藤理事長(佐藤製薬社長)は、財団が4月から「公益財団法人」として、新たな活動の第一歩を踏み出したことを報告すると共に、「業界活性化には、スイッチOTCをはじめとした第1類医薬品の導入などが期待されている。業界としては、国民のニーズに応える製品を数多く提供することで、選択肢を広げ、効果の高い医薬品を適正かつ安全に使用してもらうことが大切。今後も一般用医薬品を通じたセルフメディケーションの推進、国民の健康向上への寄与を目的に、調査研究・啓発事業等への助成を行っていきたい」と述べた。
今年度は、調査研究助成への応募が58件(採用は16件)、啓発事業への応募が5件(採用は2件)で、助成対象者は18件となった。選考経緯を報告した山崎幹夫常務理事は、「今回は、一般用医薬品の成分・製剤・剤形等の調査研究分野の応募が16件(昨年9件)と目立った。質的な面で内容が非常に濃くなってきている。財団の活動が反映し、セルフメディケーションに関する研究が、足が地に着いてきたのを感じる」とした。
今年度の助成18件のうち、調査研究16件のテーマは次の通り。
▽消費者の理解度調査による適正使用のための添付文書記載に関する検討:橋口正行(慶應大薬学部准教授)
▽処方薬とOTC薬の併用に関する実態調査:赤沢学(明治薬科大学公衆衛生・疫学教授)
▽地域薬局における販売時の情報提供法の現状調査と情報提供ツールの開発:渡辺謹三(東京薬科大学薬学部教授)
▽妊婦・授乳婦・妊娠可能な女性における一般薬・サプリメント摂取に関する研究:村井ユリ子(東北大学大学院薬学研究科准教授)
▽日本版OTCカウンセリングガイドブックとシェルフトーカーキットの作成:高中紘一郎(新潟薬科大学高度薬剤師教育研究センター准教授)
▽OTC薬の製剤設計に自由を与えるCocrystal技術の活用:尾関哲也(名古屋市立大学大学院薬学研究科教授)
▽ジペプチド摂取による禁煙効果と抗うつ作用を目指した薬理学的研究:新田淳美(富山大学大学院医学薬学研究部教授)
▽高齢者のコンプライアンス改善に寄与する経口徐放性液剤の設計:伊藤邦彦(北海道医療大学薬学部講師) ▽中学生の医薬品使用実態に関する調査研究:堺千紘(神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士前期課程)
▽乳幼児をもつ母親のOTC薬受け入れに関する検討:池田一成(慶應大学医学部小児科学教室専任講師)
▽学校薬剤師との連携による一般薬利用実態に関する調査研究:安楽誠(福山大学薬学部製剤物理化学研究室講師)
▽一般薬の安心安全確保のための登録販売者情報交換・研修システムの運用と展開:澤田康文(東京大学大学院薬学研究科特任教授)
▽真のセルフメディケーション支援薬剤師の養成と新しい薬局モデル構築のための研究:戸田紘子(NPOふぁるま・ねっと・みやぎ理事長)
▽既卒薬剤師リカレント教育への症候論の導入によるセルフメディケーションの向上:藤井聡(名古屋市立大学大学院薬学研究科教授)
▽新販売制度への変更による消費者の購買動向等に関する調査研究:出石啓治(就実大学薬学部教授)
▽医療圏におけるOTC医薬品の提供実態に関する調査研究:岩月進(刈谷市薬剤師会会長代理)