
小野氏
福岡県が2007年度から3年間で取り組んできた、ジェネリック医薬品(GE薬)の使用促進策の成果として、07年度に20%弱だった県下のGE薬数量シェアが、09年度には30%近くまで上がった。「福岡県ジェネリック医薬品使用促進協議会」の小野信文会長(福岡大学薬学部教授)が、福岡市で開かれた第4回ジェネリック医薬品安心使用促進セミナーで報告した。
福岡県ではGE薬使用促進に向けて、県・医師会・薬剤師会の三者連名の啓発ポスターや、患者向けリーフレットを作成。協議会で検討を重ねた県独自の「ジェネリック医薬品採用マニュアル」のほか、モデル病院(12施設)で採用しているGE薬について、▽成分▽規格▽品名▽製造販売業者▽モデル病院のうちの採用施設数--をまとめた「モデル病院採用GE医薬品リスト」も作成するなど、3年間にわたって対策を図ってきた。
また、アンケート調査などで、GE薬採用に当たっては、「多施設での採用」への関心が高いことも分かった。このため昨年度は、モデル病院のうち、6施設で採用している品目、製剤設計の工夫による苦味等の軽減、口腔内崩壊錠の設定、安定性の延長などを評価した48品目を選定。「汎用ジェネリックリスト」も作成している。
小野氏は、「GE薬は実績が重視されるようだ。基幹病院で使用されると、周辺の中小病院でも増えていくということを意味している。リストはGE薬採用に、大変参考になるもの」との見解を示した。
07年度から実施しているGE薬流通実態調査では、07年度に19・0%(うち内服薬19・0%、注射薬22・3%、外用薬18・6%)だった数量シェアが、09年度には28・6%(29・6%、30・8%、22・2%)と9・6ポイント増加し、09年度の全国平均20・7%を大きく上回る結果となった。また、09年度下半期に限れば、内服薬、注射薬に関しては30%を超えており、「福岡県では、国の目標値である数量ベース30%に限りなく近づいている」との現状を示した。
県民サービスの一環として取り組む出前講座も、GE薬に関する要望が多く、昨年度は15回実施して504人の県民が参加。「郡部にも県職員が出向いてGE薬の説明を行うといった、草の根的な取り組みが、県民の理解にもつながっている」と感想を話した。
福岡県は、県民1人当たりの老人医療費が、02年以降全国一高いこともあり、医療費抑制手法としてGE薬使用促進策を検討し、患者や医療従事者に向けた啓発活動、アンケート調査などの県独自の取り組みを行ってきた。
小野氏は、「医療の質を確保しながら患者負担の軽減、医療費抑制を図ることを前提に、取り組みを進めてきた」と、これまでの取り組みを説明。今後、県ではGE薬使用促進事業を3カ年事業として継続していく方針で、「今年度は新体制とし、モデル病院として産業医科大病院や九州大学病院など、核になる医療機関や一般市民の代表者も加え、幅広く、GE薬使用促進に向けて取り組みたい」と語った。