2009年4月からスタートした、日本医療機能評価機構による「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の、09年年報がまとまった。事業には、09年12月までに1774薬局が参加し、1460件の報告があった。調剤に関する報告が大半を占めたが、疑義照会も1割弱あった。疑義紹介では、薬歴や患者インタビューなど、薬剤師職能を生かし、情報を収集している事例も見られている。ただ、医薬品販売に関する報告はなかった。
報告事例について見ると、92%が調剤に関するもので、7・3%が疑義照会、0・7%が特定保険医療材料に関するものだった。医薬品の販売に関する報告はゼロだった。
調剤に関する報告では「数量間違い」(590件)が最も多く、次いで「規格・剤形間違い」(216件)、「薬剤取り違え」(181件)が続いた。
疑義照会では「処方せんのみで判断」(42・1%)が最多であったものの、「処方せんと薬局で管理している情報で判断」(34・6%)、「それ以外で判断」(23・4%)も多数を占めた。これについて機構では、「処方せんを見ているだけでは気づかないような報告も含まれている。薬剤師が、薬歴や患者とのやり取りの中で、情報を得ていることがうかがわれる」と分析している。
09年4月からスタートした事業だが、参加薬局数は右肩上がりに増え、今年9月30日現在で3183薬局が参加し、毎月2000件程度の報告が上がっている。目標参加数の5000~1万薬局達成について、機構では「来年度に入れば、5000薬局は超えるだろう」と見通すと共に、「参加している薬局の傾向として、比較的規模の大きい薬局が多い。個人の薬局にも積極的に参加をお願いしたい」とした。
ただ、参加薬局は1700軒を超えるものの、そのうち1615軒と大半の薬局が、実際の報告数はゼロとなっている。この点について、「まずは参加してもらうこと。次には実際に報告してもらうこと。その上で報告内容の質を上げていくことが今後の課題」とした。
また、医薬品販売に関する報告は、今年9月時点までなく、「薬を買いに来た人の病歴や、のみ合わせなどの情報を総合して考えると、売らない方がよいケースなどもあり得るはず。そいった事例もぜひ報告してほしい」と呼びかけた。
機構では今後、従来から行っている医療事故情報収集事業の薬剤関連事例と、薬局のヒヤリ・ハット事業をリンクさせ、互いの成果を生かした報告書の作成を進めていく方針だ。