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今こそ危機管理が問われる時期

2010年10月8日 (金)

 いろいろな意味で、激動の2010年度も下半期に突入した。
 国政では、今や日本の内閣のお家芸となった、前政権時代から続く総理大臣の短期入れ替わり。国民の諦めムード漂う情けない状況については、海外からも「首相の顔を覚える暇がない」と揶揄される始末だ。

 政権交代後、初の国政選挙となった参議院議員選挙では、与党民主党が惨敗を喫した。藤井基之氏が3年前の雪辱を果たして返り咲いたことは、薬業界にとって朗報となった。菅政権となって3カ月で改造内閣が発足し、厚生労働相には長妻昭氏に代わって細川律夫氏が就任した。大臣がころころ代わっても政策実行に影響が出ないのは、優秀な官僚が揃っているからで、この点は日本の誇るべき社会システムだといえる。

 問題は内だけではない。先月には領土問題(日本はないと主張しているが)をめぐって、中国と激しいバトルを繰り広げ、国内外に外交能力の低さを露呈してしまったことは痛恨の極みだった。外交問題は、国民生活に直接関係ないと、多くの日本国民が思っているのは、敗戦から65年間も他国との軍事衝突を体験していないからで、こんな国は世界的にも希だ。

 「社会保障の第一前提は安全保障」との言葉通り、平和を維持できなければ医療、年金、介護などの保険制度を存続させることは不可能だ。国民は、決して国粋主義的な感覚ではなく、生命、財産、社会システムを含め、日本を守るという意識を持たなければならない時代となったことを認識すべきだ。

 国民の生命を守るという観点からは、院内感染も一つの大きな課題だ。大学病院での多剤耐性アシネトバクター・バウマニによる院内感染事例は、大きな衝撃を与えた。本来、最も衛生的で安全であるはずの病院で、集団感染を引き起こしたのだから、当然かもしれないが、考えてみれば、病院は感染症を含む疾病患者が集まってくる場所であり、体力的に衰えている人が多く入院しているのだから、院内感染は起こり得る。

 問題は、いかに未然に防ぎ、もし発生した場合には拡大させない体制が整っているかである。厚労省と厚労相の対応は、なかなか早かった。

 9月6日には医政局指導課が、院内感染対策の徹底と同多剤耐性菌の情報提供について事務連絡を発出し、翌7日には長妻大臣(当時)が、感染症法の報告対象見直しについて言及した。10日には「多剤耐性菌の動向把握に関する意見交換会」を開催、15日からはインドやパキスタンで増加報告があるNDM1(ニューデリー・メタロ‐β‐ラクタマーゼ1)を産生する、新型多剤耐性菌などの実態調査を始めた。

 さらに今月1日の厚生科学審議会感染症部会では、多剤耐性アシネトバクターを感染症法の5類感染症に指定し、全国で定点把握を実施することを決めた。これら一連の対応は、多剤耐性菌に対する危機感の大きさを意味する。

 院内感染防止は国だけでは実現できない。日本病院薬剤師会は15日、「院内感染防止は薬剤師の責任」と位置づけ、会員に対して院内感染防止に貢献するよう求めている。

 4日には新たな抗インフルエンザウイルス薬を薬価基準に緊急収載しており、シーズンを前に先手を打ったことも評価される。国家の主役は、政治家でも官僚でもなく国民である。予算編成などでどちらが主導権を握るか争っている場合ではない。国民の生命を脅かす事態には、国家が一致団結して迅速に排除しなければならない。




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