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望まれる医療用麻薬の在宅での普及

2010年10月1日 (金)

 先月25、26日の両日、鹿児島市で開かれた第4回日本緩和医療薬学会には、地方開催にもかかわらず病院、保険薬局の薬剤師を中心に約2500人という多くの関係者が参加した。2007年4月に施行された「がん対策基本法」以降、緩和医療の取り組みに向けた関心の高さうかがい知れる結果となった。

 各シンポジウムや講演では、病棟や在宅などの現場で緩和ケアに取り組む際の問題点や、患者への対応などを中心に、活発な議論が展開された。会期中、複数のシンポジウムや講演を聴く中で、緩和ケアにおける医療人としてのメンタルな共通キーワードとして、「寄り添う」という言葉が多く聞かれた。

 緩和ケアを必要とする患者は、末期癌などで余命を宣告されているケースが少なくない。筆舌に尽くしがたいほどの癌性疼痛に対し、麻薬を用いた疼痛緩和コントロールを施すという医学的処置だけではなく、そうした立場の患者と向き合う医療人としての人間力が必要になる。それだけに、一朝一夕にはいかない取り組みの難しさもあろう。

 医療機関などにおける緩和ケアへの取り組みについては、2008年診療報酬改定から、緩和ケア診療加算の算定要件として、従来医師と看護師のみだった医療スタッフに、薬剤師も含まれた。昨年度には、日本緩和医療薬学会として、緩和薬物療法認定薬剤師制度を立ち上げるなど、チーム医療の中で、緩和ケアに取り組む薬剤師を支援する環境も整いつつあるといえる。

 一方、医療現場で用いられる医療用麻薬も、在宅で迎える終末期医療の分野では、まだまだ普及には至っていない現状も指摘されている。特に保険薬局では、麻薬小売業の免許を持ちながら、取り組みを行えていない薬局も少なくないようだ。また在宅医療の現場においては、緩和ケアに熱心な診療所の医師や保険薬局の薬剤師のマッチングも課題になろう。

 保険薬局が医療用麻薬を取り扱うことを躊躇する要因の一つに、高薬価ということに加え、在庫を抱える経済的負担の懸念がある。在庫を確保しても、患者が死亡した場合に余った在庫は、原則的に同じグループ企業の薬局間での譲渡や医薬品卸へ返品ができないなど、経済的負担の重さを懸念する発表も少なからず散見された。

 07年8月の省令改正では、事前に同一都道府県内の薬局と共同して「麻薬小売業者間譲渡許可」を申請し、許可を受ければ、それらの薬局間で麻薬を譲渡・譲受することが可能になった。ただ、医療用麻薬は薬事法、麻薬取締法の厳しい規制を受けるだけに、通常の医薬品の譲渡に比べて、煩雑な手続きや資料の保管が義務づけられている。そうしたこともあり、譲渡の共同申請を行う薬局は多くないのが現状のようだ。

 国際麻薬統制委員会の報告では、05~09年の日本国内の主要医療用麻薬の消費量は、最大消費国の米国に比べて20分の1という状況だ。主要各国と比較しても使用量は低く、緩和ケアがまだまだ十分にできていないと指摘する声もある一方で、欧米に比べ医療用麻薬が高薬価なため、普及が進んでいないとの見方もある。医療現場において重要度が高まる緩和ケアの円滑な推進への課題は多いが、行政的な規制緩和につながるデータの収集をいかに進めていくかが、今後のポイントになりそうだ。




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