秋分の日を過ぎ、季節は秋。「天高く馬肥ゆる秋」の諺が、のどかに口をつく。夏の暑い日差しを受け、また湿気のあった空気が、湿度の低い空気に入れ替わり、これが視界を広め、より空を高く感じるさせるということのようだ。
ところが諺の大元、中国北西部の農民にとっては、「肥えた馬に乗って略奪にくる蒙古人を恐れていた……」ということで、のどかとは正反対の意味合いがあったようだ。
秋といえば文化祭など学術、芸術的な行事に勤しむ季節でもある。薬剤師、薬学関係者等の剤界でも、学会・研究会等の開催が、晩秋にかけ全国各地で開かれる。
今週末は、日本緩和医療薬学会年会が、4回目にして初めて地方都市の鹿児島市で開催される。地方開催にもかかわらず、事前登録が2000人を超え、参加者は昨年(横浜市)の約2100人を上回るとものと予想されている。
発足間もない学会が、地方都市で開催し、かつ大都市圏での開催よりも参加者数を増すというのは、関係者に対する学会の認知、学問領域の必要性の高まりと共に、学会の成長性を感じさせる。
実際、会員数は昨年2500人、今年9月時点で3000人を優に超え、年々発展を遂げている。薬剤師の緩和医療に対する関心の高さがうかがえる結果だ。なお、今年会の事前登録者のうち、800人以上が非会員ということで、さらなる会員数の増加も見込まれる。
緩和医療薬学会は「がん対策基本法」が施行された2007年に、星薬科大学の鈴木勉教授を理事長として立ち上げられた。同年3月24日に病院薬剤師、薬科大学教員、保険薬局薬剤師の有志、賛同者らが集い、設立総会と記念講演会が開催された。
翌08年4月の診療報酬改定で、「緩和ケア診療加算」において、緩和ケアの経験を有する専任薬剤師の配置が算定要件として加えられ、薬剤師の本格的な緩和ケアへの参画を後押しし、さらに、学会への関心を押し上げる形となった。
09年には、緩和薬物療法認定薬剤師制度を立ち上げ、“専任の薬剤師”をバックアップする事業を開始した。
一方、緩和医療への関わりは、入院患者に対応する病院薬剤師だけに限られない。在宅で終末医療を含めた緩和薬物療法の必要性、重要性への認識の高まりを背景に、在宅領域等で活躍する地域の薬局薬剤師も認定薬剤師を目指すなど、多領域の薬剤師、基礎を担う薬学研究者等へも関心を広げていった。
緩和薬物療法はチーム医療が前提であり、今年会の事前登録を見ると薬剤師がほとんどだが、医師が50人超、看護師も70人超、他に臨床検査技師や理学療法士など、多様な医療従事者が登録しているという。そういった他職種との交流の場を提供できることも、学会の大きな魅力の一つになっている。
10月には、薬剤師最大の“学会”である第43回日本薬剤師会学術大会が長野市で、11月初旬には岐阜市で第4回日本薬局学会、千葉市で第20回日本医療薬学会年会と、全国規模の“学会”が続く。
現役の薬剤師には、こうした多彩な機会を利用して、基礎や臨床の知識を深め、日頃の技能に生かしてほしい。また、「生涯学習」に真摯に取り組む姿勢を、実習生をはじめとした薬学生に示してほしい。