文部科学省が2008年3月28日に公示した新学習指導要領により、中学校の保健体育の授業で“くすり教育”が必須となったのは記憶に新しい。“くすり教育”は、08年度を周知徹底期間、09~11年を移行期間とし、12年度から施行される。
改正薬事法によりコンビニ等での薬の入手が容易になるなど、若者を取り巻く薬の環境が大きな変化を遂げ、薬の適正使用に関する基礎知識の啓蒙は必要不可欠となり、中学校での薬教育の実践が待たれるところだ。
新学習指導要領の公示以降、文科省、日本学校保健会、日本薬剤師会、くすりの適正使用協議会がスクラムを組んで、「医薬品に関する教育」のよりよい実践に向けたインフラ整備を進めている。
事業を進めるに当たっては、文科省が、新学習指導要領のスムーズな完全実施に向けて必要とされる事業を、学校保健会に委託するという形式が採られている。そして、学校保健会と連携し、実働的な役割を担うのが、くすりの適正使用協議会だ。
同協議会では、「基本的な医薬品情報を若年者が患者・消費者になる前に獲得することが、将来、医薬品の適正使用に役立つ」という考えのもと、主として児童・生徒を対象としたくすり教育の普及活動を、指導者に向けて展開している。併せて、くすり教育を普及するための講師の育成や、薬の基本が理解できる教材作りも推進している。
中学校での“くすり教育”に関しては、保健体育科教員や養護教諭などを対象に、授業の進め方をサポートしている。“くすり教育”の授業方法は、各中学校に一任されており、担当教諭についても特に定められていない。だが、保健体育の授業内で行われるため、保健体育教員や養護教諭が中心になるものと予測されるからだ。
一方、学校薬剤師を対象とした“くすり教育”のサポートは、日薬が中心となって、くすりの適正使用協議会と連携しながら研修会を実施している。この研修会は昨年、東京、大阪、福岡などの6カ所で行われ、今年は兵庫、茨城など5カ所での開催を予定している。より効果的な“くすり教育”を実践するには、やはり学校薬剤師の活用が不可欠との考えから取り組まれている。
では、“くすり教育”で、どのような授業の進め方をすればよいのか。薬の社会的な背景や学校に関する話題を中学校の指導者が担当し、薬の専門的な説明は薬剤師が担当するのが、最も理想的だと考えられる。よりよい“くすり教育”を実現するには、中学校の指導者と学校薬剤師の連携が、大きな注目点になるのは間違いない。
「薬剤師は教育課程を出ていない」「教職の免許を持っていない薬剤師が教壇に立つのはおかしい」などの声も聞かれる。だが、研修会等への参加で、教える側の学校薬剤師の質の担保はできるだろう。
“くすり教育”の授業方法が、各中学校に委ねられている部分が大きい現状を見ると、学校薬剤師が授業に参画できるかどうかのは、担当する中学校の校長や教頭、教員らとの人間関係の構築がキーポイントになる。
そのためには、水質検査など学校薬剤師の業務を通じて、常日頃から学校関係者とのコミュニケショーンを励行し、薬剤師職能を理解してもらえる努力を積み重ねていく必要があるだろう。