中央社会保険医療協議会は15日、ドラッグラグ等の解消に向け、保険外併用療法制度を活用して、海外で承認されている国内未承認薬・適応外薬を使う枠組みについて議論を開始した。現行でも、治験のほかに高度医療(第3項先進医療)に該当すれば、薬事承認前に保険と併用できるが、医療機関ごとの個別評価が必要で、対応できる施設が極めて限定的だ。そのため、新成長戦略などで規制緩和の方針が示されていた。また、中医協でも抗癌剤の臓器ごとの適応を、診療側が問題視するなど、特に未承認の抗癌剤の扱いが課題となっていた。
保険外併用療法をめぐって、新成長戦略では「患者保護、最新医療の知見保持の観点で選定した医療機関において、先進医療の評価・確認手続きを簡素化する」としている。
また、行政刷新会議の議論を踏まえ、6月に閣議決定された「規制・制度に係る対処方針」でも、現行の先進医療より、手続きが柔軟で、迅速な新たな仕組みの検討を求めていた。具体的には、海外で標準治療となっていたり、他に代替治療のない臨床研究中の医薬品を、一定要件を満たす施設に使用を認め、安全性・有効性の評価を、厚生労働省の外部機関が行う方向性も示していた。
一方、中医協は、厚労省の有識者会議が妥当性を判断した上で、公知申請に関する事前評価を完了した適応外薬を、保険適用する新ルールを8月末に決め、さらに、未承認薬にも公知申請に似たルートを作って、迅速導入を促す道を探っていた。
この日の会合でも、安達秀樹委員(京都府医師会)が国内での臨床データが全くない未承認薬について、「国外で承認され、有効性について多々論文がある場合、データをまとめて、学会が評価すれば、国内で使えるようにすべきではないか」と提案した。
しかし、厚労省の成田昌稔審査管理課長が、「(審査で)海外データを部分的に使うことはできるが、全て文献だけで承認は難しい」としたため、薬事法上の対応を断念し、保険制度に焦点を絞った。ただし、現行の高度医療の枠内で運用を見直す方法や、先進医療に新たな類型を設けるなど、具体的な方向性は流動的だ。
今後は、抗癌剤の選択肢を広げるための課題、保険外併用療法の活用のあり方、安全性の担保や責任の所在の明確化の方法、必要となる費用の分担などについて検討していく。また、医療機器や材料、日本発の新たな医療技術の開発の支援についても取り上げる。