ゼネコン大手の鹿島建設、医薬基盤研究所、千葉大学の3者は、薬用植物「甘草」の水耕栽培に日本で初めて成功した。独自の栽培システムを用いることで、土耕栽培で約4年かかっていた開発期間を、約1年半に短縮できるという。今後、商業レベルの大量生産に対応するため、スケールアップを行い、1~2年後をメドに実用化を目指すことにしている。将来的には、口内炎・下痢に効果がある「セリバオウレン」や、鼻炎・胃腸炎に効く「ベラドンナ」の開発にも着手したい考えだ。
漢方製剤の約7割で使用されている甘草は、ほぼ100%を中国から輸入しているのが現状。ただ、中国による採取制限や世界的な生薬の需要増などによって、今後、安定確保はますます困難になると見られている。
こうした中、植物工場の建設・運営で実績のある鹿島は、甘草の水耕栽培に向け、国内唯一の薬用植物研究センターを持つ基盤研、植物栽培のノウハウを持つ千葉大学と組み、3年にわたって共同研究を進めてきた。共同研究では、基盤研が作出した甘草苗から、良質な苗を選抜。1本の苗から数十本のクローン苗を作る増殖法を用い、最適な環境条件のもとで開発を進めた結果、残留農薬のない、均質な甘草の栽培に成功した。
これによって、従来、約4年かかっていた開発期間が、1年半に短縮されたほか、商業レベルの大量生産にも対応できるため、甘草の安定供給につながる可能性がある。
今後、鹿島は、スケールアップ段階で品質などを確かめ、1~2年後の実用化を目指す。実用化後は、漢方薬メーカーなどに対して、植物工場の建設や苗の増殖、栽培ノウハウの提案を進めたい考えだ。