
肝炎対策推進協議会
厚生労働省の「肝炎対策推進協議会」は10日、肝炎対策の基本指針案を大筋でまとめた。指針案では、全ての国民が少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受けるようにするため、国や地方自治体が、肝炎に関する正しい知識の普及啓発、検査実施体制の整備を行うことを提言している。また、新規の肝炎治療薬や医療機器を早期に医療現場に導入するため、優先審査制度を活用することも盛り込んだ。指針案は、この日の意見を踏まえて修正を加え、月内にパブリックコメントの募集を開始。4月中にも正式にまとめる見通し。
肝炎ウイルスは、感染経路が様々で、感染してもすぐに症状が出ないため、国内にはウイルスに感染しているものの、自覚のないキャリアが多数存在すると推定されている。
指針案では、肝炎に関する正しい知識の普及を行い、全ての国民が少なくとも1回は、肝炎ウイルス検査を受検することが必要なことを周知すると共に、そのための体制整備を行う必要性を強調している。
具体的には、肝炎ウイルス検査に関する広報を強化するほか、地方公共団体が実施主体となって行っている検査実施体制のさらなる整備や、肝炎ウイルス検査の個別勧奨、出張型検診を推進することなどを明記した。
また、肝疾患診療連携拠点病院で指導的立場にある医療従事者に対しては、最新の知見を踏まえた、検査・医療に関する研修が行われるよう、要請するとしている。
肝炎ウイルス検査の結果、診療が必要と判断された者が、医療機関を受診しないなどの問題点も指摘されているため、拠点病院、専門医療機関、かかりつけ医が協働し、地域で肝炎診療ネットワークの構築を進める必要性を強調。
今後、▽ウイルス検査後のフォローアップや、受診勧奨などの支援を、地域や職域で中心となって進める人材の育成▽肝炎の病態や治療方法などの情報を取りまとめた手帳を肝炎患者らに配布――などに取り組む必要性を示した。
肝炎に対する医薬品の研究開発に関しては、「医療上の有用性などの要件を満たす医薬品は、優先して承認審査を進める」とし、現行の優先審査制度を活用し、承認審査の迅速化を図る方針が盛り込まれた。
また、肝炎対策を総合的に推進するため、基盤となる肝炎研究の推進や若手研究者の育成も行う。今後は、「肝炎研究7カ年戦略」に基づく肝炎研究を一層推進すると共に、研究成果の評価、検証も行う。