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本格化する医療機器の開発促進策

2007年02月09日 (金)

 医薬品や医療機器にかかる国内臨床試験の実施について、環境整備と促進を図るための方策が、産官学を挙げて推進されようとしている。「遅い」とか「漸く」「いよいよ」などとは言わない。恐らく初めてと思われる、三者が膝を突き合わせた議論が始まったことだけは確かだ。

 新GCP施行、新薬事法施行の過程で、当然ながら臨床試験・研究の環境整備は、最重要課題の一つであったし、制度施行時には口を揃えて、その点を強調していた。だが今まで、一向に埒があかなかった。

 医薬品に関しては本紙でも数多く指摘してきたので、ここでは医療機器について論じてみたいが、医療機器業界ではまだ新薬事法の問題がおさまらず、さらなる法整備の訴えが聞かれる。

 周知のように医療機器は、“医薬品規制に倣って”というより、医薬品に当てはめて新制度が誕生した。医薬品でも、製造販売承認という従来とは骨組みが全く違う制度へ移行するため、薬事法の骨格が出来上がった後の肉付け作業に大変なエネルギーを費やし、何とか前に進めることができた。

 医薬品医療機器総合機構の治験相談業務が、一時ストップするハプニングまで生じるほどであった。医薬品よりさらに環境や制度の整備が遅れている医療機器分野は、追って知るべしと考えて当然だ。

 医薬品の開発は、まず自社研究や大学等の外部研究で生まれた研究シーズについて、産業化の可能性を評価する。ゴーサインが出れば、ベンチャーや製薬企業自らが臨床試験の導入を目指して安全性試験などを進め、その結果を踏まえて医療機関を委託先に臨床試験が開始される。

 ところが医療機器は医薬品と異なり、特に外科分野などでは、基礎開発↓安全性試験↓臨床試験という分かりやすい流れをつくることが難しい。医師の使い勝手と評価が、開発初期から必要になるためだ。

 さらに、医師主導の臨床研究という新たな規制が加わることで、これまでフレキシブルに行われていた臨床研究が実施できなくなる。もちろん法制の解釈次第という面もあるが、立ち後れた国内開発に対し「さあ頑張ろう」という段階で、こんな問題が大きな障壁となってきた。

 パブリックコメントなどに十分な時間を割いたはずであり、「なぜ意見聴取の期間中に言ってくれなかったのか」とは行政側の言い分だが、ハッキリ言って産官学の意思疎通は、本当にお粗末だったと言うよりほかはない。

 しかし明るい兆しも見え始めた。2005年にスタートした厚生労働省と経済産業省の共同事業「次世代医療機器評価指標検討会(厚生労働省)/医療機器開発ガイドライン(GL)評価検討委員会(経済産業省)合同検討会」のもと、産学官あげてのガイドライン作成作業が、もの凄いスピードで進み始めたからである。

 もう一つ着目したいのは、医療技術産業戦略コンソーシアムや医療機器に関する経済社会ガイドライン準備委員会の活動だ。いずれも産学官共同作業である。特に後者は、保険適用に当たっての評価指標をつくっていこうとするもの。

 医薬品でも評価指標を創出していこうとする動きは本格化しつつあるが、共通しているのは、患者のQOLを織り込もうという考え方だ。ただ、会合には厚生労働省保険局や財務省が加わっていないと聞いた。錯覚であってほしいが、いずれにしても「総論賛成、各論は…」に終わらないよう頑張ってほしい。



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