一般用医薬品の販売に当たって、薬剤師とは別の新たな専門家である「登録販売者」の試験実施ガイドライン(GL)に関する検討が始まった。改正薬事法が昨年6月に国会で成立、公布され、新たな一般用医薬品制度は公布日から3年以内に施行されることになった。
登録販売者の資質等の議論が本格的に始まったのに対し、ここで改めて“登録販売者”とは、議論の過程でどのようなものだったのかを考え直してみたい。
議論の最初は、従来の薬事法では、一般用医薬品でも医薬品であるため、薬剤師による販売が原則とされていた。店舗に薬剤師が不在の時は、“薬売り場”は、薬剤師の資格を持たない人は、その医薬品を売ることはできなかった。しかし現実は違った。一般の人ならば感じていただろう。「薬剤師でなくても大衆薬を買いたい」「現実に買っているじゃないか」「薬剤師でなくとも一般用医薬品だったら買ってもいいんじゃないか」と。
事実、売られていた。薬剤師不在のまま販売されている実態が、各種調査等で指摘されると共に、規制緩和の流れと相まって、新たな一般用意薬品の販売のあり方が議論されることになる。
そして、厚生労働省の厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会でそのあり方が検討され、一昨年報告書が公表され、それに沿って昨年の改正薬事法の成立・公布となったわけだ。
改正薬事法では、▽医薬品のリスク▽情報提供と適切な相談応需――という面から、比較的リスクが低いと考えられる第2類、第3類の一般用医薬品については、“一定の資質”を都道府県実施する試験により確認された“登録販売者”が販売できるという仕組みを設けることにした。
また、“登録販売者”は「(国家)資格」ではなく、あくまでも“都道府県が実施する試験で資質確認された者”という意味。現在、店舗を前提として都道府県が許可する薬種商と似ていると考えざるを得ない。都道府県で実施されている薬種商試験内容が、ある意味でベースになると考えるのは、一般的にいって当然と考えられる。
しかし、登録販売者は薬種商のように、試験に合格した都道府県だけで“資質”が認められるのでない。一度どこかで確認された“資質”は、どこでも通用する。部会報告書でも、改正薬事法の審議過程、法律の付帯決議でも、全国的に適用されるシステムとして、国の一定の関与の必要性が求められ、今回、厚労省は試験実施ガイドライン検討会を発足させ、試験範囲や受験資格、試験実施のあり方を検討することになった。
試験内容の論点に関して、厚労省検討会で一つの方向が示されたが、まだ分からないのは登録販売者に求められる「一定の資質」の水準。薬事関連法規、副作用、副作用報告など、実務的な試験内容としているが、これからの厚労省検討会の議論を待つしかない。検討会委員からも、各水準の“到達目標”をどうするかが問題とする意見があった。
ただ、“水準”をどうするかは、試験を実施する都道府県の考えも反映されなければならないのではないか。その自治体がどこまでの水準を求めるのか。国が定めるGLは「最低基準」で、それ以上は各自治体が、地域の実情に合わせて独自で考えるべきと思う。
薬種商の試験自体、該当する業界団体は地域差を指摘している。当然、地域にはその地域の事情がある。地域差が出てくる可能性は高い。ただ、最低水準は維持すべきで、厚労省検討会の初回会合の議論を聞いていると、都道府県サイドに「全てをGLに任せよう」という面がみえたことが気にかかる。GLが具体化された段階で、地域の実情に応じた対応を考慮しなくても良いのだろうか。