乳幼児期の肺炎や気管支炎の大きな原因の一つで、その重篤性や合併症から非常といわれているRSウイルス感染症が、今年は例年より多く報告されている。国立感染症研究所の「感染症週報」(第37週:9月12~18日)で紹介されており、流行のピークを迎える12月から翌1月までの動向が注視されている。
全国約3000の小児科定点医療機関からの報告は、例年冬期にピークが見られ、夏期は報告数が少ない状態が継続しているが、今年は第25週(6月20~26日)から増加傾向が続いている。第37週の患者報告数は1414例で、2004年以降の同時期の報告数としては、これまでで最も多い状態が第16週以降継続している。
都道府県別の報告数を見ると、大阪府(205)、宮崎県(160)、東京都(126)、福岡県(100)、香川県(69)、愛知県(50)の順で、26都道府県で前週よりも増加している。
今年の第1~37週の累積報告数は3万4900で、その年齢群別割合を見ると、0歳児42.3%(0~5カ月19.6%、6~11カ月22.7%)、1歳児32.4%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順で、1歳以下で全報告数の約70%以上を、3歳以下で全報告数の90%以上を占めているのは、04年以降変わっていない。
RSウイルス感染症は冬季に最も流行する感染症で、例年12月から翌年の1月にそのピークを迎えている。感染症週報では「第37週の報告数は、例年であれば10月中旬から11月下旬に認められる水準であり、今後冬期に向けて更に報告数が増加してくるものと予想される。RSウイルス感染症は、その重篤性や合併症から特に乳幼児において極めて重要な感染症であり、今後の報告数の推移にはより一層の注意が必要」としている。
RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスが伝播することによって発生する呼吸器感染症。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもが初感染するとされているが、乳幼児期では非常に重要な疾患であり、特に生後数週間~数カ月間の時期には、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。
また、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もある。さらに、低出生体重児や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。合併症として注意すべきものには無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症などがあるという。
飛沫感染や接触感染が主な感染経路で、週報では小児集団生活施設で流行している場合は、「RSウイルス感染症と診断された有症状者の欠席などの措置に加え、▽マスクを着用するなどして咳エチケットに努める▽手洗いや速乾性刷式アルコール製剤による手指消毒剤による手指衛生を励行する--などを、職員も含めて全員が実行すべき」と注意を喚起している。