中央社会保険医療協議会薬価専門部会は26日、米英独仏4カ国の水準を参照して新薬の内外価格差を是正する「外国平均価格調整」について、引き下げ調整の際に著しく高額な国の価格を補正する仕組みを導入する方針を了承した。参照水準が低下するため、価格が下がるケースが増える見通しで、厚生労働省の試算では、前回改定以降の収載分に当てはめると三十数億円の薬剤費削減効果がある。
外国価格調整は、類似薬効比較方式や原価計算方式の算定値が、欧米価格の相加平均の1・5倍を上回る場合に引き下げ、0・75倍を下回る場合に引き上げる制度。現行は引き上げ時のみ高額値の補正を行っているが、薬価算定組織が引き下げ調整への拡大を次期薬価制度改革の課題として提案した。製薬業界では欧州製薬団体連合会と米国研究製薬工業協会が反対していたものの、この日の会合で診療・支払の両側とも引き下げ時の補正に賛同した。
具体的には、最高と最低に5倍以上の開きがあれば、最高額を参照水準の計算から除外する。5倍まで差がなくても他国の平均の2倍を超える場合には、最高額だった国の薬価を2倍値とみなして計算に加える。
ただ、業界代表の禰宜寛治専門委員(武田薬品)は、米国は効能追加などに伴って承認後に価格が上がることがある一方で、他国は基本的に低下するため、日本での上市が遅れる間に欧米で価格差が広がることがあると指摘。「ドラッグラグが短くなれば(価格差が)解消されていくのではないか」と述べ、新たな仕組みを導入する際に、厚労省の未承認薬等検討会議を通じて開発促進する品目へ配慮するよう要請した。
原価係数は直近3年平均値
このほか部会は、原価計算方式で製造経費率などの上限となる係数に、各種統計の直近3カ年の平均値を採用することも確認した。
原価計算方式の係数は、現行だと原則として直近1年間の統計数値を用いつつ、変動幅が大きい場合には更新せずに様子を見ることになっており、現在は製造経費率や営業利益率などに2005年の数値を使っている。
次期薬価制度改革からは、変動を緩和しながら新しい数値をなるべく活用できるよう、複数年の平均値を原則用いることになる。
厚労省によると、最近1年間に原価計算方式で算定した品目について、係数を3年平均値に改めて算定してみると、薬価は平均12・5%高くなる。
部会では、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会)が「影響がプラスに振れるのは気持ちのいいものではないが、考え方としてはいい」と理解を示した。診療側や公益代表からも薬価上昇を牽制する意見も出たが、西村万里子部会長(明治学院大学教授)は、「両側とも基本的には異論のないところ」とまとめた。
このほか厚労省は、新薬の市場規模が、収載時の予測から大きく乖離する事例が出ていることを問題視する声が委員から出ていることを受け、算定時の確認を厳格化する意向を示した。具体策として、[1]予測が難しい「投与患者の割合」の数字の根拠や前提等の妥当性をこれまで以上に企業へ求める[2]予測との乖離事例を集積する――を挙げた。
また、97年の新GCP省令施行によって広がった治験モニタリングなどのコストの原価計算における取り扱いについて、「承認に必須な開発費のみを評価している」と説明し、同省医政局が推進している治験プロセスの効率化が進めば、さらに治験費用の評価を適正化できるとの考え方を示した。