薬剤師が薬学的知識を生かして疑義照会を行った結果、7割で処方変更がなされ、仮に疑義照会が行われていなければ2割で患者に健康被害が、3割で医師の意図通りの薬効が得られないなど、薬物療法への悪影響が推測されるとの調査結果がまとまった。日本薬剤師会が行った「2010年度薬剤服用歴活用、疑義照会実態調査」結果によるもの。
調査は、疑義照会の実施状況や医療用麻薬の在庫状況などを把握し、今後の薬局機能のあり方を検討することを目的に実施した。同時に、次期調剤報酬改定や薬局における在宅医療推進のための基礎資料とすることも狙い。調査対象は保険調剤サポート薬局1012軒。11年2月14~20日の1週間に疑義照会を実施した全ての患者を対象に調査した。
期間中に応需した処方箋枚数は平均402・6枚、疑義照会の実施件数は平均12・7件。疑義照会の発生割合は3・15%で、日薬などによるこれまでの調査とほぼ同じ割合だった。
疑義発見のタイミングを見ると、「処方箋受付時」が52・6%と最多で、次いで「患者の薬歴確認時」22・4%、「服薬指導の時」21・1%が続いた。
疑義照会内容については、「薬学的内容に関する疑義」が82・3%と8割以上を占め、「処方箋の記載漏れや判読不能」が16・2%であった。山本信夫副会長は、「オーダリングシステムの普及などにより、処方箋の単純な記載ミスは減ってきた。その一方で、薬剤師が薬学知識を生かして行う疑義照会の割合が増えてきている」と分析している。
薬学的内容に関する疑義内容としては、「用法に関する疑い」が24・3%と最も多く、次いで「処方意図」の20・2%、「投与日数・投与量等」15・2%の順に多かった。
疑義照会をした結果、「処方変更あり」が68・9%と、7割近くで変更がなされていた。調査では処方変更がなされた事例について、仮に変更前の処方通りに服用した場合の影響についても質問している。それによると「患者に健康被害があったと推測される」20・4%、「医師の意図した薬効が得られなかったと推測される」26・8%などの結果となった。
疑義照会を行ったことによる薬剤の適正使用への貢献は、「安全性の確保」が35・0%と最多で、「薬剤の有効性の確保」26・3%、「患者のQOL向上」19・9%となった。
調査では、薬局における在宅医療推進を図る目的で医療用麻薬の在庫量、使用量、使用回数、廃棄量などの実態も調べた。麻薬小売業者間譲渡許可の取得状況は、「許可を受けている」33・0%、「受けていない」62・9%と、許可を受けているのは3割程度にとどまっており、薬局間での譲渡システムはあるものの、あまり活用されていない実態が分かった。
許可を受けている薬局グループでは、グループ薬局数の平均は4・1薬局、譲渡回数の平均は0・4回、1回以上譲渡している薬局については平均4・0回だった。