内閣官房が主催する「医療イノベーション推進シンポジウム」が12日、都内で開かれた。今年1月に内閣官房の医療イノベーション推進室長に就いた松本洋一郎東京大学副学長は、革新的な医薬品・医療機器の創出や、最先端医療の実用化に向けた予算支援について、「どこかに偏るのではなく、全体最適になるようにする必要がある。それが機能的になるようにコントロールしていかなければならない」との考えを示した。
松本氏は、医療分野を成長産業に育成し、世界最高水準の医療を国民に提供するためには、過度な輸入依存に陥っている国内の医薬品・医療機器産業の国際競争力を強化する一方で、再生医療・個別化医療など、次世代医療の実用化に不可欠な大規模インフラ、法整備などが必要になると指摘。
これらの課題を解決するためには、予算支援が全体最適となるように努めると共に、「システム・イノベーションにつながるような規制・制度改革と予算支援の一体的な改革をどう行うのかが重要な問題になる」との認識を示した。
その上で松本氏は、「まずは成功事例を作って、皆さんがそこに集中してこようというマインドを作り出さないといけない」と述べた。
この日のシンポでは、医療イノベーション推進室の八山幸司企画官が海外の先端医療の事例を報告。ゲノム研究の進展・個別化医療推進の機運の高まりに伴い、分子標的薬とコンパニオン診断の開発が進展しており、特に欧米では、コンパニオン診断の定義・承認プロセスや、遺伝子検査の品質を認証する仕組みなどの整備が進んでいることを紹介。
また、開発コストがかかる個別化医療は、高額になるため、英国では、医療技術や医薬品の導入に際して、臨床有用性や費用対効果を評価する仕組みが構築されていることや、米国では、遺伝子による差別を禁止するための法整備を行うなど、個別化医療を導入するための体制が整えられている状況を報告した。