国内大手製薬企業5社の2012年3月期決算(連結)が出揃った。第一三共とエーザイは、主力品の特許切れや円高が響き減収減益。特に第一三共は、印ランバクシーの米FDAとの和解費用計上で、純利益が大幅減益となったほか、エーザイは主力のアルツハイマー病認知症治療剤「アリセプト」が約1400億円の売上減となって業績を直撃した。武田薬品は、ナイコメッド社の買収効果で増収を確保したが、買収関連費用を計上したため大幅減益となった。一方、アステラス製薬と大塚ホールディングス(HD)は、主力品の伸長で増収増益を確保し、明暗を分けた。
売上高を見ると、国内首位の武田は、主力の2型糖尿病治療剤「ピオグリタゾン」が膀胱癌リスク懸念や日本の後発品参入の影響で、23・6%減。円高も減収要因となったが、米国で多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」が14・4%増と伸長したことに加え、買収したナイコメッドの売上が大きく寄与し、6・3%の増収を確保した。
アステラスは、主力の免疫抑制剤「プログラフ」が米国での後発品浸透により4・8%減となったが、グローバル製品の過活動膀胱治療剤「ベシケア」が12・1%増、OSIの抗癌剤「タルセバ」が37・7%増と売上を拡大。国内医療用医薬品も2・7%増を確保し、全体では1・6%の増収となった。
大塚HDの医療関連事業は、売上高の5割以上を占める主力の抗精神病剤「エビリファイ」が、米国の処方拡大、日本や欧州での適応追加を背景に、4・8%増と堅調に推移。提携したルンドベックからの一時金収入も寄与し、4・1%の増収となった。
これに対し、第一三共は、主力の高血圧治療剤「オルメサルタン」が3・4%増、印子会社ランバクシーが2・1%増、抗血小板剤「プラスグレル」の共同販促収入も大幅に増えたが、合成抗菌剤「レボフロキサシン」が特許切れの影響で24・2%減となったほか、為替のマイナス影響や国内での販売権返還が響き、3・0%の減収となった。
エーザイは、新製品の自社抗癌剤「ハラヴェン」が約8倍増と伸長。国内医療用医薬品も6・4%増と堅調だったが、主力の「アリセプト」が米国特許切れにより、49・4%減と約1400億円を失った影響が大きく、15・7%の二桁減収となった。