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実効性あるワクチン産業ビジョンを

2006年3月24日 (金)

 ワクチン産業ビジョン策定に向けて、柱となる四つの基本的考え方が厚生労働省の検討会に示された。ワクチンを新興・再興感染症等の危機管理対策の柱の一つに位置づけ、国の施策の明確化、国内ワクチン製造企業の臨床開発力を強化すると共に、持続的な安定供給が行われるように国内の生産体制を確立する方向で、ビジョンが作成されていくことになった。

 日本のワクチン市場は、医療用医薬品の1%に相当する約600億円の規模。小規模企業が市場を支えていることが大きな特徴だ。輸出は3%程度に過ぎないが、水痘ワクチンやBCGなどは数多くの国に輸出されているし、米国、中国、インドネシア、タイなど外国企業へのライセンスアウト、アジア等の途上国を中心に製造技術の供与を行うなどの事業も展開されている。

 また日本市場はこれまで、小児のワクチン接種に左右される面が強かった。例えば、1994年の予防接種法改正でインフルエンザワクチンが接種対象から除外され、市場は大きく縮小した。その後、2001年にインフルエンザワクチン接種が学童や高齢者といったハイリスク群に推奨されたことを受けて市場は拡大し、04年には400億円規模にまで回復したが、94年以前の水準には届いていない。

 一方、海外のワクチンメーカーは、80年代には主要企業が18社あったが、02年にはメガファーマと呼ばれる5社に集約され、各社それぞれ年間100002000億円、医療用医薬品の約7%を売り上げている。さらに、混合ワクチンや性感染症を対象にしたワクチンが数多く開発されると共に、対象年齢も小児ばかりでなく、思春期、青年期、高齢者など幅広い層が対象となっている。

 こうしてみると、日本のワクチンメーカーは、小規模ながら一定の技術力を有し、またワクチン生産のインフラもある程度整ってはいるが、小児用ワクチンに特化した形態の企業体だったと言えよう。

 わが国は少子高齢時代を迎えており、子供の数は年々減少している。今までのように小児をターゲットとした事業形態では、市場拡大は望めない。また、生産コストが収入の6割というように原価が高く、収益が1割程度という現行ワクチン産業の現状では、研究開発コストの捻出にも影響が出てくる。国内ワクチン企業は、存続の危機といっても過言ではない。

 しかし一方で、新型インフルエンザや生物テロの危険性が世界的に指摘されていること、米国企業のインフルエンザワクチンが一時的に供給ストップしただけで日本市場が混乱した経験などを考え合わせると、社会の危機管理という面から、国内ワクチンメーカーの育成は国家的にも重要な課題になっている。

 検討会では、成人・高齢者、改良型ワクチンなど成長が期待される領域や、小児市場で未導入の新・改良用ワクチンによる展開、途上国を含む世界市場での展開など、国内ワクチン企業に新たな取り組みを求めていくことが確認された。また、国内企業の臨床開発力強化に向けて、具体的施策を提示する必要も強く要望されている。産業ビジョンは、机上の理論を組み立てるだけでなく、実効性のあるものを作り上げてほしい。




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