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重視される企業の社会的責任

2006年3月29日 (水)

 「松下電器より心からのお願いです。20年から14年前のナショナルFF式石油暖房機を探しています」で始まる松下電器のテレビCM。昨年12月から、幾度となく目にした人も少なくないだろう。このCMは、石油温風暖房機の欠陥による一酸化炭素中毒事故の再発防止に向けて、問題機種の回収を目的としたもの。視聴者からも「この冬最も気になるCM」として注目されている。

 松下電器は、20023年前に12万円前後で発売した石油温風機を、5万円で買い取るという異例の方法で、問題機種の徹底回収に取り組んでいる。新聞やテレビの回収告知だけでなく、約1000人の社員を動員して、石油販売店で注意を喚起するチラシを配布するローラー作戦も展開した。

 だが、本年1月の時点で、対象となった石油温風機15万2000台のうち、問題機種が把握できたのは約60%だったため、全ての世帯と宿泊施設の計6000万件に告知ハガキを郵送した。一連の対策費用は、告知ハガキだけで十数億円、総計で200億円を超えるとも言われる。「できる限り多くの人に危険性を知ってもらい、最後の一台まで探し出したい」という松下電器の真摯な姿勢は、消費者から高い評価を得ているが、その根底には同社が打ち出している「超スーパー正直宣言」がある。

 松下電器の創業は1918年、電機メーカーとして世界に名を轟かせるまでに成長した。その後、バブル経済の崩壊を機に、販売不振などから赤字に陥り、その凋落振りは目を覆うばかりであった。しかし、2000年6月に社長に就任した中村邦夫氏は、「創造と破壊」をスローガンに人員削減やグループ事業再編などに手腕を発揮し、経営危機からのV字回復を成し遂げた。

 「重くて遅い松下」から「軽くて早い松下」への変貌に挑戦すると同時に、「超スーパー正直宣言」を社内外に繰り返し発信し続けた。この宣言は、「企業として社会にごまかしや嘘があってはいけない」という理念の下、「世の中に正直に説明責任を果たす」ためのものだ。

 今回の石油温風機問題への対応も、「超スーパー正直宣言」に則って展開されたのは言うまでもない。企業の社会的責任(CSR)に対する真摯な取り組みは、結果的に松下電器のブランドイメージを向上させた。

 一方、薬業界では武田薬品がベンザブロックシリーズで、パッケージの使用上の注意に「高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、糖尿病の診断を受けた人は、服用しないでください」と明記したことが話題を呼んでいる。昨年4月の改正薬事法に伴い、自主記載により対応したもので、昨年6月頃からこの注意を記載した製品が、薬局・薬店の店頭に並ぶようになった。

 一般用医薬品の注意事項で、使用してはならない対象疾患をはっきり明記したのは同社が初めてだ。この試みからは、「経済的側面だけを考えるのではなく、よく効くOTCを安全かつ適切に患者に提供したい」という武田薬品ヘルスケアカンパニーの実直な経営方針が読み取れる。松下電器の「超スーパー正直宣言」に相通ずるものがあると感じる人は少なくないだろう。

 企業には経済価値の最大化と共に、社会価値の最大化が求められている。特に人の生命に関わる製薬産業は、一般の企業以上に社会的責任を厳しく問われるといっても過言ではない。社会の声に謙虚に耳を傾け、それをきちんと経営に反映させることが、会社発展の礎となることを改めて認識したい。




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