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臨床検査のブラックボックス

2006年4月24日 (月)

 いま医療機関は、非常に厳しい環境にさらされている。合理化の嵐が各部署に影響を与えており、20年ほど前に騒がれた医療関連ビジネス台頭の第2波として、医療アウトソーシングが津波のように押し寄せている。その直撃を受けている一つが病院検査室である。

 20年前に容認されたブランチラボやFMS(Facillity Management System)が現実のものとなって、採用が劇的に増加している。ブランチラボは業務委託であり、業務請負であるから、病院検査室側に指揮・監督・命令権がない。これはどの業種にも言えることであり、要するに業務委託は、当該業務を業者に丸投げしても差し支えない場合に活用されるものだ。

 だが果たして、臨床検査は丸投げしてよい業務なのであろうか。FMSは業務委託ではなく、契約に基づいて装置・機器・検査薬及びヒューマンパワーを、フレキシブルに相互活用しようという考え方だが、法的管理責任は病院側にあるものの、実質的には業者側が仕切っている。病院側が契約書の内容を十分に精査せず、中には病院スタッフの業者側への在職出向などといったケースも起こっており、その違法性が指摘されている。

 一体、このような事態を招いている要因は何なのであろうか。病院検査室への業者サービスは、つい最近まで装置・機器は無料で置き、メンテナンスも無料、検査薬で商売するという変則的な取引慣行が続いていた。これは絶対に是正しなければならないし、実際に是正へと大きく動き出している。しかし単純に考えると病院にとっては、今まで無料だったサービスが、突如として有料になるのであるから痛手になる。重ねて言うが“単純に考えると”である。

 おそらくFMSはその抜け道とも理解できる。しかしキチンと費用を計算した上で、丸投げが妥当かどうかを検討する病院はほとんどなく、その能力もないと厳しい指摘をする関係者もいる。

 もう一つ決定的な問題背景がある。それは臨床検査技師の情報過疎化である。検体検査の外注化が進み、医薬品のMRに相当する検査薬メーカーの検査情報担当者が、病院検査室に寄りつかなくなってしまっている。

 日本臨床検査自動化学会の春季セミナーでは、「臨床検査のブラックボックスにどう立ち向かうか」をテーマにシンポジウムが行われた。ブラックボックス化とは、検査機器や試薬キットの組成や特徴を理解せずに検査を行うことを指すのだという。これでは異常な事態が生じた時、対応の仕方さえ分からない。そうした状況が危惧されている。

 今回の診療報酬改定では、輸血管理料や外来迅速検体検査加算の新設、病理診断料の大幅増点など、院内の臨床検査業務に対する評価が始まっている。行政側も、院内臨床検査業務の重要性を察知し出したのではないかと理解する。

 また病院の中では、自力で検査室を奪還する事例も出てきている。プラスの方向への動きが始まっている。

 この事態を乗り切るには、まずは検査室の自助努力、病院管理部門の認識改善が必要であり、加えて検査薬・機器メーカー、受託検査ラボ、代理店のバックアップが大切になる。病院は検査室を失ってはならない。




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