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核酸医薬の開発推進に期待

2006年5月8日 (月)

 核酸を利用して、多様な機能を持つ機能性分子を創出できることが明らかになってきた。

 主な機能性核酸には、遺伝子発現を抑制する「アンチセンスDNA」や「siRNA」、特定の蛋白標的に特異的かつ強固に結合する核酸抗体の「アプタマー」があり、これらを利用した医薬品は一般に核酸医薬と呼ばれている。

 核酸医薬は、癌、関節リウマチ(RA)、IBD(炎症性腸疾患)、アトピー性皮膚炎、眼科疾患など、局所的疾患への幅広い応用が期待されている。一方、乳癌治療薬「ハーセプチン」をはじめとする抗体医薬は、抗体となる蛋白質を主成分としており、こちらも次世代の医薬品として注目されている。当面は、抗体医薬は全身的疾患、核酸医薬は局所的疾患と、ターゲットを棲み分けして開発が進められるものと予測される。

 核酸医薬については最近、世界初のアプタマー医薬品として、ファイザーの加齢性黄斑変性症治療薬「マキュジェン」(眼科用薬)が米国で承認された。わが国においても、ベンチャー企業のアンジェスエムジーが、冠状動脈狭窄症、RA、アトピー性皮膚炎の治療を目的に、NFκBデコイオリゴを開発した。

 転写因子のNFκBは、サイトカインや接着因子など、免疫応答に関わる遺伝子の発現を調節する役割を持つ。このNFκBがゲノム上の結合部位に結合すると、免疫応答の関連遺伝子が過剰に発現する。NFκBと構造が類似する“おとり型核酸”のNFκBデコイオリゴは、NFκBになりすましてゲノムと結合し、免疫応答遺伝子の過剰発現を阻止するメカニズムを有する。冠状動脈狭窄症に対する臨床試験は、既に現在PII段階まで進んでおり、新しい心筋梗塞治療薬の誕生が待たれるところだ。

 抗癌剤領域では、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)をターゲットにした抗体医薬「アバスチン」が米国で認可されている。だが、この抗体医薬を核酸に置き換えて、代替とする開発競争が世界中で繰り広げられている。VEGFを標的とした核酸医薬は実現性が高く、生物製剤特有の高コスト、抗原性といった問題点がクリできるからだ。

 その一方で、核酸医薬の実用化において、解決すべき課題も少なくない。核酸、特にRNAは生体内で分解されやすいため、医薬品として実用化させるには、効果を示す前に、生体内で分解されないような安定性を付与する必要がある。また、核酸を単独で静脈投与しても、速やかに分解・排泄されて患部に届きにくいという薬物デリバリーや、遺伝子発現制御のために細胞膜を透過させなければならないという膜透過性の問題もある。

 これら実用化への課題を解決するため、従来よりDDS等を用いた“合わせ技”的な手法が試みられている。新規DDSの一例として、大日本住友製薬と高研が共同開発した「アテロコラーゲン」や、日本新薬が開発した「NS‐9」がある。

 アテロコラーゲンには、生体内で網目構造を形成して薬を包み込み、ゆっくりと放出する機能がある。さらに、負に荷電した薬と静電的な複合体を形成し、細胞に送り届ける役割も担う。NS‐9は、二本鎖RNAを活性本体とした核酸カチオニックリポソーム製剤で、RNAを安全かつ効率的に細胞内へ導入する。

 最近、ジェネティックラボと北海道大学薬学部薬化学講座の共同研究から、核酸の分子構造そのものを改変し、実用化に必要な機能を核酸分子自体に付加するという、シンプルかつ根本的に問題解決する画期的なスーパー核酸(4‐チオヌクレオチド)技術も開発された。

 核酸医薬のシーズに、これらの新しい製剤技術をうまくマッチングさせ、これまで克服困難とされてきた疾患に対して、有効な医薬品が一日も早く生まれることを期待したい。




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