日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は先週末、協会として取り組んできた「医薬品のネットおよび通信販売に関する検討会」の報告書(本紙9月12日号既報)を公表した。一連の医薬品のネット通販等の販売形態について、ドラッグストア企業側の考え方をまとめた格好といえる。
今回のJACDSの検討結果では、大きくは、「安全性の担保や責任所在を明確にするルール作りの必要性、また、実店舗での医薬品販売を補完するためのネット販売等の利用」という可能性を示唆する意見に集約されたようだ。この報告書は既に厚生労働省に提出されており、今後、日本薬剤師会等関係各方面にも提出されるという。
報告書の内容では、医薬品のネット販売を全面的に肯定するものではないが、昨今のあらゆる商品においてネット販売が普及している中で、医薬品のネット販売においても、薬剤師や登録販売者が電話等を用いて、情報提供を行うなどの一定のルールなどの条件について言及、提案する形となった。
注目されるのはネット通販で、従来から省令で規制されている第1類、第2類の扱い。第2類については、副作用報告が多いとされる指定第2類を対象外として、それ以外の第2類薬はネット・通信販売の対象とすべきとしている点だ。また、この第2類には薬局製剤における漢方処方も含んでいる。
医薬品のネット販売および郵送等の通信販売の基本的な利用基準について、一般用医薬品販売における大半の流通を担うドラッグチェーンとしての見解としてまとめたこの報告書。医薬品の対面販売の原則を打ち出しながらも、ネット販売のルール作りにも触れるという点では、各方面に配慮した折衷案というか、苦渋の決断とも見てとれる。
昨今の購入スタイルの多様化もあり、医薬品のネット販売の可能性について議論することは否定しない。その一方で、改正薬事法に伴う新医薬品販売制度の「肝」は、専門家による対面販売というところにあるはず。薬剤師や登録販売者など医薬品の専門家から直接情報提供を受けることが、医薬品の適正な使用にもつながるのは間違いない。
また、薬局・薬店のない離島等の居住者や、身体上の理由で店舗に赴けない人に対する、医薬品販売業としての対応も今後の課題になるのかもしれない。やはり、それを全てネット販売で解決できるものではないだろう。
現行のネット販売議論の中では医薬品の販売・流通形態の議論が先行するあまり、その販売に関与する薬剤師や登録販売者の役割が置き去りにされている気もする。こうした専門家の存在こそが、医薬品販売に欠かせない要であることを、業界としてもっと国民、一般生活者にアピールしていくべきではないだろうか。