厚生労働省が進めている「薬剤師生涯教育推進事業」の事業者として、今年も上田薬剤師会が受託することが決まった。厚労省がそれまで日本薬剤師研修センターに委託していた同事業を見直した初年度に、同薬剤師会が受託してから3年連続となった。
事業の焦点は、チーム医療の推進、OTC薬を用いた薬剤師による軽医療マネジメントの2点と明快で、「実践」がキーワードの一つとなっている。
毎回、新たな取り組みが盛り込まれるが、今年度も「ミステリーショッパー」方式を用いた研修効果検証プログラムが導入された。いわゆるモニターによる覆面調査で、研修成果の自己評価ができるようにしようとの取り組みだ。
昨年度は、薬剤師による軽医療が進んでいるオーストラリア薬剤師会の協力を得たが、今年度は同国に加えカナダの大学の協力も得て、さらに生涯教育の精度を高めるよう努めている。
一方、「病院研修」の領域も、院内でのチーム医療推進が焦点であり、これに災害医療や国際医療を含む研修の充実を図っている。これに対応する協力病院もこれまで以上に幅を広げている。
同じチーム医療の観点で、地域における多職種連携推進に向けたプログラムが各地で行われることになっている。訪問看護ステーションでの実習も含まれており、普段見ることのない他職種の実際の仕事に触れられる貴重な機会になることは間違いない。
改正薬事法が遵守されているのかの検証を毎年、厚労省が覆面調査として実施しているが、他人にとやかく言われるよりは、自らが自らを律することが重要だ。既に上田薬剤師会や神奈川県薬剤師会でも自ら覆面調査を行い、法の遵守状況を確認すると共に、日ごろの研修成果を確かめる取り組みにつなげている。
プロとして自己研鑽に励み、これを継続することは当然のことで、かつ、その成果を自ら検証することも重要となる。今後は、その評価結果を何らかの形で公表し、消費者や患者から信頼を得ていく。そんな積み重ねが、医薬分業や薬剤師への理解を深め、信頼感醸成につながるのではなかろうか。
同事業では、そういう次代のリーダー育成も大きな柱になっている。取り組みに関しては、はっきりとした理念と意識を持ち、しっかりとした方向性を示した上で、目的に沿った新たなプログラムも精力的に構築している。
処方箋枚数や受取率だけ見れば医薬分業は、成熟期を迎えている。これを絶頂期とすれば、後は下り坂しかない。同事業の取り組みは、今の分業に対する危機感を映し出しているように思える。
同薬剤師会の真摯に取り組む姿勢が日本病院薬剤師会をはじめ、多くの国内外の関連団体や大学等の関係者の強力な支援につながっている。単年度予算事業で、かつ多くの応募があったにもかかわらず、同薬剤師会が今回も受託したのは、こうした将来を見据えた活動が評価されたのにほかならない。