2009年度の改正薬事法完全施行に向け、現在、厚生労働省は医薬品リスク分類を皮切りに、登録販売者試験のガイドライン作成など体制整備に向けた取り組みを進めている。一般用医薬品(一般薬)に関連する製・配・販の各業態も固唾を飲む思いでその動向を見ているのが現状だろう。
中でも、登録販売者試験では、各方面には「従来の薬種商販売業認定試験よりも容易」との見方があり、既存の医薬品販売への参入障壁が低くなる『その後』を見据えて動き始めるなど、それぞれの思惑が交錯する。
まず、流通を担う卸では、異業種参入を視野に既存の薬系ルート以外の販路拡大を課題として動き出している。既に大手のメディセオ・パルタックホールディングスは、日雑・化粧品卸との経営統合で、一般薬卸事業を移行させ物流一本化を図る。医薬品販路の拡大で機能強化を図るアルフレッサグループの一般薬部門を承継する形で事業展開するシーエス薬品は、大手食品卸の日本アクセスと業務提携するなどの動きがあり、今後も異業種卸との連携が、薬粧卸再編の主流となる可能性は否定できない。
その卸の再編が加速していく中で、「取引条件の見直しのほか、必要な薬理学的情報提供が途切れてきた」との声が、薬局・薬店関係者から聞かれるようになった。「市場原理主義が本来の改正薬事法の主旨を押し潰す格好になる」(全国医薬品小売商業組合連合会近藤良男会長)と危機感を募らせる。
既に医薬全商連ではメーカー・卸に対し、新製品・販促情報や副作用情報の伝達などを要望した。販路拡大が見込まれる一般薬市場で、医薬品関連情報提供体制を構築できるかはメーカー、卸にとっても喫緊の課題となろう。
また、新設の登録販売者の団体を巡っては、3月に日本チェーンドラッグストア協会等を中心に「日本医薬品登録販売者協会」(仮称)が結成された。登録販売者の養成から生涯教育・継続教育などの側面的支援事業を行うことを目的とするもので、今秋にも本格的な活動を目指す考えのようだ。
会員は原則、試験に合格した登録販売者とするようだが、近く、法人、個人の会員募集も開始する予定とも聞く。会長には、当時全日本薬種商協会(全薬協)理事だった鎌田伊佐緒氏が就任した。
ところが鎌田氏は、その後の全薬協代議員会で、機関決定なく事業内容が競合する両団体員を兼任した是非が問われ、会員除名審議にまでに発展。結局、同氏は執行部から外れる形となり、協会組織の方向性が一枚岩でなかったことを示す結果となった。
鎌田氏は法改正前から同協会専務理事として医薬品販売制度改正検討部会委員も務め、協会の方向性を指し示してきた人だけに、全国の協会会員の動揺は計り知れない。この6月には全薬協創立70周年記念・第60回全国大会の節目を迎えるが、今後、全薬協が示す方向性も大いに注目される。
いずれにしても改正薬事法施行に向け賽は投げられた。46年ぶりの医薬品販売制度改正だけに過去の方法論、既得権などとも照らし合わせる中で、矛盾を感じるケースは多々あるだろう。ただ、医薬品供給を通じて国民の健康に資する点では、薬剤師も登録販売者も同じ社会的責務を負うことになる。この基本は忘れてほしくない。