医師・患者視点でMRを育成
学校法人医学アカデミー薬ゼミトータルラーニング事業部(YTL)は、講義やe‐ラーニングなど様々な教育アプローチを通じて、製薬企業が行うMR育成を支援している。導入教育では、グループワークを活用した集合研修が増える中、MR認定試験で、受験科目免除がある薬剤師資格を持った新人MRの教育体制を模索していく。さらに2年目以降の継続教育では、「知識」「技能」「倫理観」だけでなく、「意欲」や「ターゲティング」を含めた5要素を強化。医師や患者の視点に立って、疾患から自社製品の位置づけを考えられるMRの育成をサポートする。
YTLの2013年度の導入研修実績は27社に上り、2科目以上を実施する受託企業数だけで20社と、MR導入教育の外部受託市場でトップシェアを誇る。こうした実績や、薬剤師国家試験予備校として培った人材教育の経験・ノウハウを生かし、各社のニーズに対応した教育研修を手がける。昨年4月には、インストラクショナルデザインの考えを取り入れたe‐ラーニング「完全攻略Web」の提供を開始し、集合研修を補完する教育ツールを揃えた。

教育研修カンファレンスの様子
MR教育にいま何が求められているか。YTLでは最新の顧客ニーズを把握するため、様々な取り組みを行っている。8月には、「MR教育研修カンファレンス」を実施し、製薬企業37社が参加した。導入研修の傾向や課題を分析し、今後の方向性を探るべく意見交換を行った。
導入研修をめぐっては、講義主体でありながら、グループワークを取り入れた集合研修を通じて、知識定着を図るケースが増加している。こうした中、薬剤師MRへの教育体制のあり方が検討され始めており、非薬剤師と同じカリキュラムで実施した場合に、グループワークや集合研修でどのように薬剤師を扱い、どう活用していくか各社が模索している。
カンファレンスに参加した37社を対象に、自社の研修スタイルを聞いたところ、「薬剤師は別カリキュラムで研修を行っている」と回答したのがわずか2社にとどまった一方、「同じカリキュラムで研修を行う」企業が28社と大半を占めた。ただ、28社のうち14社は、「同じカリキュラムだが、薬剤師にミッションを与えている」とした。
講師と非薬剤師の間に位置する特別な存在として、薬剤師の知識がグループやクラスに共有され、研修を運営しやすいメリットがある。しかし、うまくいくかどうかは、薬剤師個人の適性に寄与する部分が大きいのも事実。メリットと課題の両面がある中、薬剤師MRへの教育体制や、グループ・クラス内で果たすべき役割などを含め、導入教育のあり方を再考していく構えだ。
カンファレンスの中で、日本大学薬学部・鈴木孝教授より「薬学教育の環境変化に伴うMR教育への影響~薬学教育6年制の現状と課題~」の講演があった。薬学6年制教育の現状として、各年次に一般目標(GIO)と、その内容の各項目に到達目標(SBO)が設定されている。1年次のリメディアル教育、早期体験実習から、年次を追って幅広い視野・専門知識を習得し、5年次からの薬学実務実習の準備をしていき、6年次で応用能力を高め、医療人としての心を養うこととしている。
課題としては、薬学生は就職の幅が広く学生の求めに応じた教育ができているか、医療従事者になる者への態度の教育が十分か、また、身に付いているか、研究成果を報告するためのまとめる力、文献検索・プレゼンテーション能力をつけるための努力をしているかなどを挙げた。
MR2年目以降の継続教育では、臨床的な視点を持ったMR育成が課題となっている。「製品説明ばかりで、患者の症状や症例について医師と話すことができない」「訪問規制で医師に会えない」という課題解決に向け、患者や医師へのインタビュー映像教材を提供。患者を知るために、疾患知識に関する講義から実施し、その後、患者の症状や症例のケーススタディとして、初診時での主訴、治療後の転帰までを映像からイメージし、自社製品の位置づけを考えていく機会にするものだ。
医師に関しては、なぜ医師を目指したのか、研修医以降のキャリア、さらに医師の1週間の勤務状況を知り、MRとしてふさわしい行動・態度を考える機会にする。また、処方箋から患者背景を考える研修や、説明会を有効活用するためにプレゼンテーションスキルを磨く研修など多岐にわたっており、企業が求めるMR、自ら考え取り組むMRへの育成に向け、“YTLの基軸教育”を推進していく方針だ。
YTL(医学アカデミー薬ゼミトータルラーニング事業部)
http://www.ytl.jp/